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2007/03/28

【ばんえい記念回顧2】あふれてる。幸せも哀しみも希望も涙も

Race_01_start
■第39回ばんえい記念、スタート
帯広競馬場を照らす初春の太陽もだいぶ西に傾いた午後4時30分、大一番の火蓋が切られた。
この日のダートコースの状態はというと、前夜に舞った降雪の影響で、午前のうちは水分を多めに含んだ軽い馬場でレースが行われていた(10時15分の時点で馬場水分5.7%)。
しかし、午後に入って天候も回復し、決戦の時間が近づいてくるに連れ、徐々にその様相は変貌していく。馬場水分の数字そのもの4.8%(13時50分)と軽いはずなのに、第2障害に挑む輓馬たちの表情が苦悶に歪んでいるのだ。午後のレースで各馬が障害通過に要している時間も、体感的にかなり長く感じられるようになってきた。どうやら、第2障害の部分は馬場の乾燥が進んで、力の要るコンディションへと変わりつつある。一方で、障害からゴールまでの平坦コースは、まだしっとりと湿った感じがして、橇の滑りも快調そうに見えた。
そんな印象を手がかりに推理するなら、おそらく今年のばんえい記念はやはり第2障害が最大のポイントになる。いち早く砂地の頂に立って、この難所を乗り越えることに成功した者にこそ、勝利の女神は微笑むだろう・・・・そのようなレース展開をしっかりと胸のうちに入れて、ファンファーレを待った。ばんえい記念直前、馬場水分の発表数値は4.4%

■第1障害
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内から2番エビスオウジャ3番アンローズらが先行態勢を示し、昨年の2着馬・ミサキスーパー(5番)も好スタート。しかし、1トンという桁外れの重量を課せられている分、どの馬も軽やかに第1障害を乗り越えるまでには至らない。そんななか、大外枠9番のミサイルテンリュウがまず先頭を切って、障害の頂を乗り越えていく。

■意外な積極策
Race_03_tomoe_power

第1障害を越えたところで先行勢も、ひとまず息を整えるため小休止。すると、いつの間にか中団からスルスルと1頭の馬が集団に追いついてきた8番枠のピンクの帽子・ベテラン坂本騎手が操るトモエパワーだ。スタートや第1障害への到達はけっして速くなかったはずだが、序盤のロスを早々と挽回。以降、終始積極的にレースを運ぶこの馬を中心に、競馬が展開していく。

■駆け引き
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中間点の平坦コース。インの各馬の動きを確認しながら、先頭のポジションを確保する坂本騎手(青袖に赤の勝負服)のトモエパワー。一方、これをマークするように、じっくりと直後の位置につける鈴木恵介騎手のミサイルテンリュウ(白地に紫の六文銭の勝負服)。ミサイルが直後まで追いつくと、まるで「おいでおいで」と呼びかけるようにトモエがスルリと逃げていく。だが、ここで相手の挑発に乗っては思うつぼ・・・・ギュッと口元を結んでミサイルの手綱を押さえる恵介騎手の表情にも注目。

■難所に到達
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単騎先頭のポジションを確保したまま、坂本トモエパワーがいち早く第2障害の手前に到達。6番シンエイキンカイの大河原騎手、9番ミサイルテンリュウらもこれに続く。さあ、ここからが勝負どころ

■ああああっ!
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激しく気合いをつけ叱咤する坂本騎手の手綱に応え、真っ先に障害越えに挑んだのがトモエパワー。しかし、1トンの重量はさすがのこの馬にも、ずしりと応えたか?坂の途中でがっくりと膝をついてしまう。「ああああっ!」 期せずして場内全体から湧き上がる「悲鳴」と「歓声」。この機を逃さず、ミサイルテンリュウがトモエに襲いかかっていく。

■一騎打ち
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ベテラン坂本騎手の冷静な手綱捌きで態勢を立て直したトモエパワー、全身全霊の力を傾け難所越えに挑むミサイルテンリュウ。両雄の火花を散らす一騎打ちが、障害の頂点を目の前にして続く。酷量1トンを背負っての砂地の頂に立つのは、果たしてどっちだ?「恵介!恵介っ!」「上げろっ!」「あと少しっ!」 ファンの声援は最高潮に達し、両雄の背中を後押しする。「恵介ぇっ!」もちろん、私も絶叫モードに突入している。

■明暗
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だが、両雄が砂上の頂で肩を並べたと思ったのも、つかの間、ミサイルの前足が砂の上で空転する。がっちりと四肢で大地を捉え、真っ先に坂を駆け下りていったのは、トモエパワー。ミサイルテンリュウは、あと一歩が繰り出せず、苦しい状況に追い込まれていく。それでも内枠のスターエンジェルアンローズらが坂の頂上付近であえぎ苦しむうちに、なんとか2番手で坂を下りていく。

■死力を尽して
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何とか2番手の位置を確保したミサイルテンリュウ。だが、第2障害の死闘ですべての力を使い切ってしまったのか?平坦コースに入ると、がっくりと腰の位置が下がって、脚どりも重い・・・・先頭をいくトモエパワーは、遙か前でゴールをめざしている。もはや優勝の可能性はほとんど残されていない。それでも、恵介騎手の叱咤の応え、ミサイルテンリュウは全身全霊を傾け、ゴールをめざし一歩、また一歩と歩をすすめる。

■追撃者たち
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続いて障害越えを果たし、ミサイルに追いすがってきたのは、帯広巧者のシンエイキンカイ高橋洋典騎手のヒカルセンプー。えっヒカルセンプー? 単勝最低人気の伏兵が、まさかこの位置にいるとは!失礼ながら誰もがわが目を疑った。その後、3頭による猛烈なデッドヒートがゴールまで続いていく。

■ゴール・・・・War is Over
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トモエパワーが先頭でゴールに到達してから、40秒後。ミサイルテンリュウシンエイキンカイ、そしてヒカルセンプー。ゴール前あとわずか数メートルまで3頭による熾烈な死闘が続いた・・・・すいません、私自身がレースに熱狂していたせいで、その激闘を記録した写真が残っていません。あと一歩のところで、遂に力尽き止まってしまったミサイルをシンエイキンカイが僅かに交わして2着でゴール。高橋ヒカルセンプーは、猛追してきたスターエンジェルを辛くも凌いで、堂々の4着入線を果たした。

「ばんえい記念はな、十等賞の馬がゴールに入って終わるのさ。こったらレース、ほかにないっしょ」 (鳴海章氏 「いのちに抱かれて」より引用)

最後は松田騎手に導かれたエビスオウジャが7分35秒6のタイムを記録し10等賞でゴール。過酷なレースを無事完走した10頭に対し、場内から惜しみない拍手が鳴り響いたことは言うまでもない。
2着争いのデッドヒートに目を奪われてしまったせいで、優勝馬トモエスーパーが、栄光のゴールを通過する瞬間こそ見逃してしまったものの、レースの神髄は十分に味わうことができ、ほんとうに満足している。見る者すべての心を揺さぶり、とてつもない興奮と感動をもたらす「ばんえい記念」というレース。記録よりも記憶に残る激闘と評してしまっては、また陳腐な表現になってしまいそうだ。「幸せも哀しみも希望も涙も」確かにそこに存在している(「いのちに抱かれて」ハードカバーの帯に記されたキャッチコピーより)。それだけで十分ではないか。勇気ある戦いに挑んだ10頭の競走馬と関係者に、心から敬意を表したい。

3月 28, 2007 旅打ちコラム, 07年競馬予想・回顧 |

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コメント

少し体調を崩しまして、ご挨拶が遅れてしまいましたm(__)m
帯広では、一緒にレースを楽しむ時間を共有できて、とても嬉しく、また楽しかったです。
また、山城守さんの見事なレポートを拝見し、感動がぶり返してきています。

毎回、涙があふれてくるばんえい記念ですが、僕には未だ、何故こんなに涙があふれてくるのか、巧く説明する事が出来ません。
しかし、山城さんはじめ、皆さんのレポートを読んでいて、それが少しづつ、垣間見えてきている気がします。

投稿: landslider@地方競馬に行こう! | 2007/03/30 0:06:01

>landsliderさん

彼の地から帰ってもう4日も経つというのに、いまだに凄いものを目撃してしまった・・・という興奮がさめやりません。ちょっと熱に浮かされるような気分が続いています。ネット上の各所でも、現地観戦した方々のレースレポートが公開されていますが、どの記事からも、この感動を誰かに伝えたい!という熱い想いがあふれていますね。
現地では、ばんえい記念直前のレクチャーがたいへん参考になりました。シンエイキンカイを本命に指名という慧眼も、ばんえい観戦のベテランならではの快心の予想でしたね!

投稿: 山城守 | 2007/03/30 1:01:41

レース編、読ませていただきました。

ばんえい競馬はどんなものなのかは知っているつもりでいたことが恥ずかしいと思うくらい、圧倒的な迫力を感じ取りました。

とはいえ、本当に感じているわけではない・・・
実際に足を運ばなければ!!と奮起しています。
もちろん2日以上での日程を組んでいくつもりです。

投稿: skyli | 2007/04/02 0:54:10

skyliさん
私も5月の連休には、新生ばんえい競馬を目撃するため、もう一度帯広を訪れる予定でいます。輓馬や騎手たちの一挙手一投足を間近に感じるライブの醍醐味は、やはり現地で味わいたいもの。新シーズンをむかえ、昭和のムードが色濃く漂うあの競馬場がどうお色直しを施してくるかにも興味があります。
たった1泊2日の行程でも、往復の航空券代にホテル代とかなり出費のかさむ旅打ちですが、せめて馬券で少しでも穴を埋められるよう、頑張ります。

投稿: 山城守 | 2007/04/05 2:38:03

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