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2007/03/28

【ばんえい記念回顧2】あふれてる。幸せも哀しみも希望も涙も

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■第39回ばんえい記念、スタート
帯広競馬場を照らす初春の太陽もだいぶ西に傾いた午後4時30分、大一番の火蓋が切られた。
この日のダートコースの状態はというと、前夜に舞った降雪の影響で、午前のうちは水分を多めに含んだ軽い馬場でレースが行われていた(10時15分の時点で馬場水分5.7%)。
しかし、午後に入って天候も回復し、決戦の時間が近づいてくるに連れ、徐々にその様相は変貌していく。馬場水分の数字そのもの4.8%(13時50分)と軽いはずなのに、第2障害に挑む輓馬たちの表情が苦悶に歪んでいるのだ。午後のレースで各馬が障害通過に要している時間も、体感的にかなり長く感じられるようになってきた。どうやら、第2障害の部分は馬場の乾燥が進んで、力の要るコンディションへと変わりつつある。一方で、障害からゴールまでの平坦コースは、まだしっとりと湿った感じがして、橇の滑りも快調そうに見えた。
そんな印象を手がかりに推理するなら、おそらく今年のばんえい記念はやはり第2障害が最大のポイントになる。いち早く砂地の頂に立って、この難所を乗り越えることに成功した者にこそ、勝利の女神は微笑むだろう・・・・そのようなレース展開をしっかりと胸のうちに入れて、ファンファーレを待った。ばんえい記念直前、馬場水分の発表数値は4.4%

■第1障害
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内から2番エビスオウジャ3番アンローズらが先行態勢を示し、昨年の2着馬・ミサキスーパー(5番)も好スタート。しかし、1トンという桁外れの重量を課せられている分、どの馬も軽やかに第1障害を乗り越えるまでには至らない。そんななか、大外枠9番のミサイルテンリュウがまず先頭を切って、障害の頂を乗り越えていく。

■意外な積極策
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第1障害を越えたところで先行勢も、ひとまず息を整えるため小休止。すると、いつの間にか中団からスルスルと1頭の馬が集団に追いついてきた8番枠のピンクの帽子・ベテラン坂本騎手が操るトモエパワーだ。スタートや第1障害への到達はけっして速くなかったはずだが、序盤のロスを早々と挽回。以降、終始積極的にレースを運ぶこの馬を中心に、競馬が展開していく。

■駆け引き
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中間点の平坦コース。インの各馬の動きを確認しながら、先頭のポジションを確保する坂本騎手(青袖に赤の勝負服)のトモエパワー。一方、これをマークするように、じっくりと直後の位置につける鈴木恵介騎手のミサイルテンリュウ(白地に紫の六文銭の勝負服)。ミサイルが直後まで追いつくと、まるで「おいでおいで」と呼びかけるようにトモエがスルリと逃げていく。だが、ここで相手の挑発に乗っては思うつぼ・・・・ギュッと口元を結んでミサイルの手綱を押さえる恵介騎手の表情にも注目。

■難所に到達
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単騎先頭のポジションを確保したまま、坂本トモエパワーがいち早く第2障害の手前に到達。6番シンエイキンカイの大河原騎手、9番ミサイルテンリュウらもこれに続く。さあ、ここからが勝負どころ

■ああああっ!
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激しく気合いをつけ叱咤する坂本騎手の手綱に応え、真っ先に障害越えに挑んだのがトモエパワー。しかし、1トンの重量はさすがのこの馬にも、ずしりと応えたか?坂の途中でがっくりと膝をついてしまう。「ああああっ!」 期せずして場内全体から湧き上がる「悲鳴」と「歓声」。この機を逃さず、ミサイルテンリュウがトモエに襲いかかっていく。

■一騎打ち
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ベテラン坂本騎手の冷静な手綱捌きで態勢を立て直したトモエパワー、全身全霊の力を傾け難所越えに挑むミサイルテンリュウ。両雄の火花を散らす一騎打ちが、障害の頂点を目の前にして続く。酷量1トンを背負っての砂地の頂に立つのは、果たしてどっちだ?「恵介!恵介っ!」「上げろっ!」「あと少しっ!」 ファンの声援は最高潮に達し、両雄の背中を後押しする。「恵介ぇっ!」もちろん、私も絶叫モードに突入している。

■明暗
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だが、両雄が砂上の頂で肩を並べたと思ったのも、つかの間、ミサイルの前足が砂の上で空転する。がっちりと四肢で大地を捉え、真っ先に坂を駆け下りていったのは、トモエパワー。ミサイルテンリュウは、あと一歩が繰り出せず、苦しい状況に追い込まれていく。それでも内枠のスターエンジェルアンローズらが坂の頂上付近であえぎ苦しむうちに、なんとか2番手で坂を下りていく。

■死力を尽して
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何とか2番手の位置を確保したミサイルテンリュウ。だが、第2障害の死闘ですべての力を使い切ってしまったのか?平坦コースに入ると、がっくりと腰の位置が下がって、脚どりも重い・・・・先頭をいくトモエパワーは、遙か前でゴールをめざしている。もはや優勝の可能性はほとんど残されていない。それでも、恵介騎手の叱咤の応え、ミサイルテンリュウは全身全霊を傾け、ゴールをめざし一歩、また一歩と歩をすすめる。

■追撃者たち
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続いて障害越えを果たし、ミサイルに追いすがってきたのは、帯広巧者のシンエイキンカイ高橋洋典騎手のヒカルセンプー。えっヒカルセンプー? 単勝最低人気の伏兵が、まさかこの位置にいるとは!失礼ながら誰もがわが目を疑った。その後、3頭による猛烈なデッドヒートがゴールまで続いていく。

■ゴール・・・・War is Over
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トモエパワーが先頭でゴールに到達してから、40秒後。ミサイルテンリュウシンエイキンカイ、そしてヒカルセンプー。ゴール前あとわずか数メートルまで3頭による熾烈な死闘が続いた・・・・すいません、私自身がレースに熱狂していたせいで、その激闘を記録した写真が残っていません。あと一歩のところで、遂に力尽き止まってしまったミサイルをシンエイキンカイが僅かに交わして2着でゴール。高橋ヒカルセンプーは、猛追してきたスターエンジェルを辛くも凌いで、堂々の4着入線を果たした。

「ばんえい記念はな、十等賞の馬がゴールに入って終わるのさ。こったらレース、ほかにないっしょ」 (鳴海章氏 「いのちに抱かれて」より引用)

最後は松田騎手に導かれたエビスオウジャが7分35秒6のタイムを記録し10等賞でゴール。過酷なレースを無事完走した10頭に対し、場内から惜しみない拍手が鳴り響いたことは言うまでもない。
2着争いのデッドヒートに目を奪われてしまったせいで、優勝馬トモエスーパーが、栄光のゴールを通過する瞬間こそ見逃してしまったものの、レースの神髄は十分に味わうことができ、ほんとうに満足している。見る者すべての心を揺さぶり、とてつもない興奮と感動をもたらす「ばんえい記念」というレース。記録よりも記憶に残る激闘と評してしまっては、また陳腐な表現になってしまいそうだ。「幸せも哀しみも希望も涙も」確かにそこに存在している(「いのちに抱かれて」ハードカバーの帯に記されたキャッチコピーより)。それだけで十分ではないか。勇気ある戦いに挑んだ10頭の競走馬と関係者に、心から敬意を表したい。

3月 28, 2007 旅打ちコラム, 07年競馬予想・回顧 | | コメント (4) | トラックバック (2)

2007/03/27

【ばんえい記念回顧1】パドックから愛をこめて

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いやあ、聞きしに勝る凄いレースでした・・・・第39回ばんえい記念
総重量1トンにも達する酷量を課せられた現役トップクラスの輓馬たちが、2つの障害越えに挑み、死力を尽くし繰り広げる激闘? いやいや、「ばんえい記念」というレースの真価は、とてもそんな陳腐な言葉で表現できないほどの深さをたたえている。
たった5分そこそこの短い時間のなかに、ありとあらゆる競馬のエッセンスがぎゅっと凝縮され、とてもじゃないけど一言や二言では語り尽くせないほどの濃密な味わいを醸し出しているのだ。
鍛え抜かれた輓馬たちの途方もない筋力と忍耐力、愛馬を叱咤激励する騎手たちの技量・駆け引き・インサイドワーク、そんな彼らと身も心も一つとなって熱い声援を送り続ける観衆の興奮。実際にその真っ直中に身を置き、体験した感動を言葉に置き換えようとしても、レースの凄さはまるで砂のようにさらさらと、手のひらからこぼれ落ちていってしまう。ここは下手に言葉を重ねるよりも、写真のほうが、この日の帯広競馬場を包みこんでいた雰囲気を記録するためには有用だろう。
そんなわけで、以降2回にわたって、当ブログ管理人撮影による拙いデジカメ写真でばんえい記念の回顧エントリをお届けします。まずは、第1回「パドック編」から。

1番 スターエンジェル 藤野騎手
正月の帯広記念2着の実績が評価され、このレースの伏兵として人気を集めていた牝馬スターエンジェル。最内枠からまさかの一発を狙って虎視眈々。
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2番 エビスオウジャ 松田騎手
既に10歳のベテランだが2人引きでパドックを周回していくエビスオウジャ。見栄えのする漆黒の馬体の持ち主だ。
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3番 アンローズ   藤本騎手
女王の称号に相応しい戦績を残していながらも、何故か帯広コースでは未勝利の最強牝馬。前夜祭では「ただの姉ちゃん」と揶揄されるも、そんな低評価を覆すことができるか?大一番を前にしているとは思えないほど、穏やかで可憐な表情が印象的。
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4番 ヒカルセンプー  高橋騎手
このレースがラストランとなる老雄の手綱を取るのは、ばんえい記念・初参戦の若手・高橋洋典騎手。パドックの表情からも、さすがに緊張は隠せない。だが、このコンビが本番で、誰も予想し得なかったほどの快進撃をみせる・・・・
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5番 ミサキスーパー 鈴木勝堤騎手
ばんえい記念で王者スーパーペガサスの後塵を拝し続けること3回。「今年こそ・・・・」の思いが誰よりも強かったはずのミサキスーパー。だが、周回を重ねるその姿からは、名馬のオーラのようなものは伝わらず。果たして本番で巻き返しはあるのか?
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6番 シンエイキンカイ 大河原騎手
帯広巧者としてその名も高い10歳の大ベテラン。近走の成績こそぱっとしないけれど、自分で身体を作れるタイプなのか?大一番を前にして、キッチリと仕上げてきた印象。
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7番 ツルマキシンザン  西弘美騎手
既に2走前・名物レース「蛍の光賞」にも出走しており、今季限りの引退が決定している古豪。最後に見せ場を作るか?
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8番 トモエパワー  坂本騎手
スーパーペガサスなきあとのばんえい記念で、1番人気(最終オッズは単勝2番人気)の重責を背負っていたのがこの馬。ピカピカに磨き上げられたような逞しい馬体と全身から横溢してくる闘志。パドックに登場した瞬間から、思わずため息がでるほどの素晴らしい仕上がりだった。当ブログの前日予想では▲評価としたが、この気配を目撃してしまった以上、もう馬券を買い足すしかない、と思わず覚悟する。
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9番 ミサイルテンリュウ  鈴木恵介騎手
こちらもトモエパワーと甲乙つけがたいほどの万全の仕上げ。気合い十分、ちょっとした風格さえ漂わせながら、のっしのっしとパドックを周回していく。この日の帯広コースは障害こそ力の要る状態だったが、第2障害を降りてからゴールまではやや水分を含み、走りやすそうなコンディション。自慢の先行力を生かし切って先頭で障害を駆け下りれば、ばんえい記念初勝利のチャンスも高そうに思われた。
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パドックでの各馬の気配だけなら、渾身の仕上げを施してきたトモエパワーとミサイルテンリュウによる一騎打ちムードが濃厚・・・・そこで自分の馬券も、ミサイル・トモエの馬単表・裏を大本戦に、この両馬を1着に固定したシンエイキンカイ・ミサキスーパーへの流し馬券(馬単)を押さえに購入することを決断した(合計6点
果たして、その結果は如何に? (次回「レース編」へと続く)

3月 27, 2007 旅打ちコラム, 07年競馬予想・回顧 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2007/03/25

【ばんえい記念】ビギナーによるビギナーのためのレース展望

Banei_obihiro_070324ばんえい競馬・年間開催のフィナーレを飾るビッグレース「ばんえい記念」を目撃するため、ただいま帯広に遠征中である。
数々の重賞を制してきたトップクラスのオープン馬が顔を揃え、ばんえい競馬の頂点を決する大一番だが、何よりもこのレースの個性を規定しているのは、総重量1トンもの橇を曳くという過酷な負担が出走馬に課せられるということ。体重1000キロ以上の輓馬といえど、自らの目方と同じ重さの橇を曳きながら2つの障害を越えていくというのは、並大抵のことではない。サラブレッドの競馬に例えて言うなら、凱旋門賞(最強馬決定戦)とグランドナショナル(過酷な負担)を足して2で割ったような特殊なレース?と言えるのかもしれない。地方競馬に行こう!さんの表現を借りるなら「想像を突き破る凄いレース!
とはいえ、ばんえい競馬に関して言うなら、当ブログ管理人などは、最近馬券を買い始めたばかりの一介のビギナー。実際にレースを目撃するまでは、いったい何がどれくらい想像を突き破っているのか?語る術をもたない。そんなわけで、レース当日の朝を迎えた現時点になっても、ばんえい競馬観戦歴の長いベテランによる次のような言葉を拝借して、このレースの凄さを想像してみるばかりである。

「一応、ばんえい記念の出走資格は四歳以上のオープンクラスってことになってるが、一トンの荷物を背負って歩ける馬はそうそういない。形だけは十頭そろえたけど、半分はゴールにたどり着けないかも知れない」
(略) 「何が起こるかわからんのがレースだ。さっき一着、二着は決まってるといっただろ。だけどな、出走するうち五頭は一トンを曳いて立派にレースができる。それに雪が降ってるじゃないか。馬場の水分が多いんだ」
「軽いってことですね」
~鳴海章いのちに抱かれて
第十話 吹雪のばんえい記念の章より引用

今年の大一番の行方を占ううえで、欠かせないポイントはやはり馬場状態をどう見るかということだろう。一般にばんえい競馬の場合、「晴れた日は砂が乾いて橇が滑りにくくなる」(=力の要る馬場) 「雨の日は砂が濡れて橇の滑りがよくなる」(=軽い馬場)と言われる。この感覚は、平地のダート競走でいうところの「乾燥して力の要る馬場」「脚抜きの良い馬場」というのに近いのだが、ばんえい記念の場合、過酷な負担重量が出走馬に課せられている分、通常のレース以上に、馬場状態がレースに影響を及ぼす度合いは大きいといえるのかもしれない。
土曜日には好天に恵まれ、もうもうと砂塵が舞い上がるほど乾燥状態だった帯広競馬場の馬場。しかし、帯広市内では昨夜からみぞれが降っており状況は一変している。朝の時点では雪や雨もやんで、日中には天候も回復。この季節にしてはかなり気温も上昇する(最高13度)という予報が出ているけれど、こうなるとばんえい記念のスタートが切られる16:30頃のコースは水分をたっぷりと含み、「砂が濡れて橇の滑りがよくなる」状態でレースが行われる公算が高い。

そんな軽めの馬場状態を前提に狙ってみたいのは、やはり水分含量が多めのときに好走実績を残しているタイプだ。手元の「競馬ブックばんえい版」から、馬場の水分別着順成績に注目し「水分4.0%以上」のときに上位に来ていることが多い馬を探っていくと、シンエイキンカイ、トモエパワー、ミサイルテンリュウといったあたりが有力だろうか?このレースの常連・ミサキスーパーも、2着までなら可能性はありそうだ。

<結論>
◎ミサイルテンリュウ
○ミサキスーパー
▲トモエパワー
△シンエイキンカイ

王者スーパーペガサスの4連覇が象徴しているように、基本的には1番人気が強く、馬券的には平穏な決着に終わることが多いレース。その王者が現役を退き、新時代の最強馬決定戦となる今シーズン、下馬評では、ばんえい記念初挑戦となるトモエパワーが1番強いのでは?という意見をよく聞く。
ただし、総重量1トンを曳くばんえい記念になると、それ以外の重賞レースにおける実績をそのまま鵜呑みにすることができないのも、また事実。ここは、豊富な実績と先行力・障害力を兼ね備えたベテランの奮起に期待してみたい。
ミサイルテンリュウは、前哨戦のチャンピオンCで先頭で第2障害を通過しながらゴール前ぱたりと止まって3着に終わったが、当時のレース解説者によるなら、この馬は「周囲の牝馬を気にする」タイプ。あのときは後方から猛然と追い込んできた隣枠の牝馬フクイズミを気にしすぎた?のが敗因とも考えられる。幸いにして今回、牝馬の入った枠順(1・3枠)からはだいぶ離れた大外10番枠。これならレースに集中できそうで、昨年の経験(4着)を糧にした好走が期待できそう。
ミサキスーパーは、昨年までのこのレースで、スーパーペガサスの後塵を排すること3回。目の上のタンコブが消えた今年は初制覇の期待もかかるけれど、平地の競馬に例えると、メイショウドトウステイゴールドのようなタイプで、先頭でゴールを通過することに、どこか抵抗があるのかもしれない。とはいえ実績・先行力は侮れず、近走の戦績から評価が下がるようなら、むしろ積極的に狙っていきたい。
トモエパワーは、正月の帯広記念で880キロの酷量を克服した実績があり、ばんえい記念初挑戦といえど、それなりの評価が必要。経験不足=消しという判断は早計だが、他重賞とは別次元のばんえい記念を一気に制覇するまでの勢いは感じられない。押さえの評価。以下では、帯広巧者といわれるシンエイキンカイ(鳴海章氏の本命)までを一応マークしておく。

キルトクールには、ベタな評価で恐縮なのだが、帯広コースでは何故か未勝利の最強牝馬アンローズを指名してみたい。鳴海氏の言を借りるなら、他の競馬場では「女王様」でも、帯広に行くと「ただのねえちゃん」。私もねえちゃんは嫌いではないけれど(笑)、帯広での初勝利が「ばんえい記念」という展望では、ちょっと想像を突き破りすぎていないか?

(おまけ)
今年のばんえい記念に出走馬の顔ぶれについては「ばん馬のいる風景-BANEI Photo Gallery -」さんのところで、美しい写真による紹介エントリが公開されています。まさに多士済々というべき個性的なメンバーたちですね。レースが本当に楽しみです。

3月 25, 2007 旅打ちコラム, 07年競馬予想・回顧 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/03/24

【高松宮記念】「差し馬vs先行馬」の図式を深読みする

Suzuka_phoenix_at_tokyo_shinbun_hai_07春まだ浅い時季の開催ながら、良好なコンディションを保って時計の出る芝。平坦・小回りのローカル競馬場らしいレイアウト。いや、正確にいうなら平坦ではなく、3角付近を頂点にしてゴール前直線半ばまで緩やかな下り坂が続いていくのだから、中京コースの短距離戦は、一見するかぎり先行有利を絵に描いたような条件設定に思える。

実際のところ開催当初の下級条件などでは、ラチ沿いにへばりついた逃げ・先行馬同士によるワンツー決着ばかりで、4角外を回す差し馬では到底届きそうもないという印象を受ける。だが、春開催をトータルしてみると、意外や意外、差し脚質のタイプでも逃げ・先行勢に劣らない戦績を残しているという事実がある。
今シーズンを含む過去5年間の第1回中京開催を対象に、芝千二の条件における脚質別決着傾向を洗い直してみると、結果は下表のとおり。連対率こそ逃げ・先行馬より低位とはいえ、先行馬とほぼ同等の連対数を残している差し馬を春の中京・芝千二で軽視するのは早計であると、数値が雄弁に物語っている。

■第1回中京開催 芝千二・脚質別決着傾向(03年~)
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開催前半で逃げ・先行勢が有利ということは、すなわち、開催も後半になって芝が使い込まれてくればくるほど、差し馬有利の傾向は強くなるということだ。実際、上記データで差し馬が残している25勝のうち、16勝は開催後半のBコースで記録されたもの。先週の日曜メイン・トリトンS(準オープン)でも、道中後方に位置していた差し・追い込み馬が掲示板を独占する結果となって、春開催後半の中京短距離戦は差し馬有利という傾向を強く印象づけていた。中京春開催のフィナーレを飾る高松宮記念も、もちろんその例外ではないだろう。

その高松宮記念。00年に施行時期が3月に繰り上げられたが、それ以降の過去7回で差し馬の優勝回数は5回を数える。2着に至っては、4角ドンジリの位置から追い上げたデュランダルを含め差し・追込勢が6度も連対を記録。行った・行ったの前残り決着だった03年を唯一の例外として、その他の年は多かれ少なかれ差し馬優勢の競馬が繰り返されている。秋のスプリンターズSの場合、電撃戦にふさわしく先行馬同士で決着する例が多いが、春の高松宮記念ではそれと対照的な差し有利の傾向が定着していると、結論づけてもいいだろう。

それでは、いったい何が差し有利の傾向を生み出しているのか?開催が進むにつれ、ラチ沿いから荒れてくる芝3角~4角の曲がりがキツく先行馬が一度減速を強いられるコースレイアウトなど、中京コースの特殊性がG1に限らず芝千二全般に共通するこの傾向を後押ししていることは、想像に難くない。
だが、おそらくそれだけではないだろう。アドマイヤマックスオレハマッテルゼラインクラフトなど近年このレースで活躍している差し馬が、生粋のスプリンターというよりも、どちらかといえばマイル適性に秀でたタイプであることを思えば、「差し馬vs先行馬」の対決の図式を「マイラーvs短距離専業馬」に置き換えて解釈できないか?とも思うのだ。
短距離重賞路線の整備と反比例するかのように、年々レベル低下と層の薄さが進行しつつあると指摘されることが多い、わが国のスプリンターたち・・・・オープン特別やG3のクラスでは、どんぐりの背比べ的な争いのなかからお山の大将は登場しても、所詮はどの馬も似たようなレベルである。秋にはスピードの絶対値が違う海外の強者、春は別路線から転戦してくるマイラーたちが難敵として立ち塞がるG1では、さすがに苦戦を免れない。そんな構図が、秋の先行決着、春の差し決着に表象されていると考えると、高松宮記念の行方も自ずと見えてくるのではないか?
「マイラー」「差し馬」・・・・この2つのキーワードが、今年も勝馬探しのポイントになりそうである。

<結論>
◎スズカフェニックス
○マイネルスケルツィ
▲オレハマッテルゼ
△プリサイスマシーン
注スピニングノアール

昨年の予想エントリでも触れたことだが、このレースは前身の高松宮杯当時から、重賞戦線で実績を残しながらG1になると、あと一歩栄光に手が届かなかった「イマイチ君」たちに、花を持たせる結果に終わることが多い。いうなれば、叩き上げの苦労人の努力が報われる浪花節のG1競走(笑) 今にして思えば、昨年のオレハマッテルゼなどは、見事にその恩恵にあずかった感が、なきにしもあらずだった。
そうした意味で、スズカフェニックスは、まだまだ苦労が不足しているかも?という気がしないでもないが、この馬とてデビューはダート戦で地味に9着(笑)。そんな苦杯を出発点に一歩づつ実績を積みながら、今日の地位を築き上げてきた。「マイラー」「差し馬」という高松宮記念の勝馬条件からも真っ先にピックアップできるのは、この馬の決め手であり、前哨戦で外を回しすぎた反省もあるのだから、武豊騎手もロスの少ない騎乗を心がけてくれることだろう。アドマイヤマックスの鮮やかな差しきりを彷彿させる競馬を期待する。
以下では、脚質にこだわらず千四~マイル路線で上位の実績を残している馬たちをピックアップ。人気のプリサイスマシーンは、馬群を割れる渋太い決め脚が今回も繰り出せるなら連対圏突入の目も十分だが、その反面、直線行き場をなくすリスクも内包しており、あえて4番手評価とした。

キルトクールは、当然「スプリンター」「先行馬」に該当するタイプから選出したい。有利とはいえない最内枠で意外と鉄砲の効かないシーイズトウショウでもいいのだが、ここは3番人気くらいの支持を集めそうなエムオーウイナーを切ってみる。ディバインシルバーが逃げなければ、この馬がレースを先導していく展開も考えられるが、いずれにせよ、中団からレースを進めるマイラー勢の格好の目標にされることだろう。

3月 24, 2007 07年競馬予想・回顧 | | コメント (2) | トラックバック (11)

2007/03/18

【スプリングS】11頭立てなら結果も順当に

Flying_apple_at_kyodo_tushinhai同じ皐月賞トライアルとはいっても、例年少頭数で順当な結果に収まりがちな弥生賞に対し、スプリングSのほうは多頭数の激戦というイメージがある。馬券的な傾向からしても、最近4年間は1番人気馬の優勝がなく、4~5番人気あたりの伏兵が中波乱を演出。激戦に相応しく、4角でまだ中団~後方に位置する差し馬の活躍も目立っていたように思える。

ところが、今年のトライアルにエントリーしてきたのは僅か11頭と少々寂しい顔ぶれ。本番に向けて主力を形成すると思われるフサイチホウオーアドマイヤオーラドリームジャーニーらが早々と試走を完了しているせいもあって、例年に比べメンバーレベルも小粒という印象を免れない。
中山芝千八の場合、多頭数の混戦になると、先週の中山牝馬ステークスのように1~2角に各馬が殺到し、先行勢にとって息の入らない厳しい流れになることも多いが、わずか11頭立ての競馬なら、道中の隊列は早々と決まってしまいそうである。
枠順の有利・不利もあまり考慮する必要はなく、道中は淡々としたペース。こうなると、紛れが生じる目は限りなく小さいと言わざるを得ず、ゴール前の着順も基本的には各馬の能力順とイコールという結果になりそうだ。脚質的には、差し馬よりも前の位置で競馬を運べるタイプが有利。勝負どころで自在に動けて早めに抜け出す脚力があれば、なお心強いだろう。

■中山芝1800 9~11頭立 脚質別成績(02年~)
Nakayama_1800_11to_kyakushitsu_betsu





<結論>
◎フライングアップル
○マイネルシーガル
▲フェラーリピサ
注サンツェッペリン
注シベリアンバード

Ferrari_pisa_at_hyacinth_sデビュー戦、京都の芝マイルでトーセンキャプテンに半馬身差まで迫ったフェラーリピサが実は能力最上位?という可能性も否定できぬが、02年以降、前走ダート戦から勇躍参戦してきた馬たちの戦績を紐解いてみると「0-0-1-17」。このうち唯一3着に健闘していたのが、次走で皐月賞馬の栄冠に輝く若き日のダイワメジャー。それ以外の17頭の戦績をたどってみると、ローエングリン(前走東京ダ500万下1着→スプリングS6着)を唯一の例外に、その他全馬がダート路線へと活躍の場を求めるという運命をたどっている。要するにダイワメジャー級の芝適性と潜在能力の持ち主でないかぎり、前走ダート組がこのレースで上位に入賞することは難しい。高速ダートの府中千六で1分35秒9の破格のタイムをマークしたフェラーリピサとて、その例外ではないだろう。
そんなわけで本命は無難に、フライングアップルを指名する。秋の福島戦を最後に勝利の美酒からは遠ざかっているとはいえ、フサイチホウオーを相手に2度もコンマ1秒差の接戦を演じているのだから、重賞級の能力の持ち主であるのは疑いのないところ。展開に応じて自在に動ける脚質も魅力で、府中よりむしろ中山で力任せに他馬をねじ伏せるような競馬を得意とするタイプだろう。相手は、前走中山マイルで他を子供扱いするかのような強さをみせたマイネルシーガル。メンバー中2頭の朝日杯出走馬によるワンツー決着が濃厚だろう。前走の京成杯の逃げ切り勝ちが鮮やかだったサンツェッペリンは、臨戦過程が万全と言い難く、今回は評価を下げたい。
キルトクールは、エーシンピーシー。血統的傾向を洗ってみると、父ミスプロ系は02年以降「0-0-1-12」。母父ミスプロ系でも「0-0-0-10」と分が悪く、フサイチペガサスを配したこの馬にとって、スプリングSは鬼門というべき一戦になりそうだ。

3月 18, 2007 07年競馬予想・回顧 | | コメント (0) | トラックバック (5)

2007/03/17

【岩手競馬】奇跡は起こるのか?一筋の光明さす

競馬融資負担変更し再提案へ(2007/03/17 19:28)
巨額の融資案が県議会で否決され、廃止の危機に瀕している岩手競馬について、構成団体の盛岡市と奥州市は、県議会に再考を求めるため、330億円のうち両市の負担割合を高くすることを提案しました。これはきょう開かれた、県競馬組合議会で盛岡市の谷藤市長と、奥州市の相原市長が明らかにしたものです。県議会で否決された330億円の融資は、今年度分で県が297億5000万円、盛岡市が17億5000万円、奥州市が15億円を負担する枠組みでしたが、県の負担割合が大きくて、災害の備えに支障を来すのではという声が上がっていました。提案は、盛岡市と奥州市が負担額を10億円ずつ増やして、県の負担を軽減するというものです。増田知事は、県議会が両市の提案に理解を示すならば再考の余地はあると話しています。
TVIテレビ岩手 ニュースサイトより引用)

「駿平の岩手競馬に注目!! 」さん経由での最新ニュース。
本日17日開催された岩手県競馬議会での出来事だそうです。増田知事自身は、競馬廃止を前提とした議案を来週の臨時県議会に提出する方針を崩しておらず、まだまだ情勢は予断を許さぬものの、奇跡に向けた光明が一筋さしてきた思いがします

Lets_go_on_michinoku_race_1各自治体の厳しい財政状況は理解しているつもりですし、先週、県議会の下した判断も尊重しなければならないでしょう。しかし、昨年までとは形を変えても、何とかして競馬の灯を守っていくことはできないでしょうか?
岩手と同じく存廃問題に揺れた北海道のばんえい競馬では、帯広市長が存続を決意して以降、地元を中心に自分たちの競馬を守り発展させようという、大きな気運が広がっています。地域の誇りを全国にアピールして支持を広げ、競馬をより良いものにしていこうという北海道の人たちの心意気には、いつも勇気づけられます。競馬を愛する気持ちでは、けっして北海道に負けていない岩手県でも、このような取り組みの可能性は残されていると思います。私たちファンも大いに、存続に向けた願いを声にしていく必要があると思います。
とはいえ、先立つものはお金です。負債の償還という目前に迫ったピンチを回避しないかぎり、どのような形であれ、岩手県の競馬が生き残るのは難しいでしょう。今回の両市長による提案をきっかけにして、関係者の英知による最善の選択がなされることを願うばかりです。

3月 17, 2007 岩手競馬 | | コメント (2) | トラックバック (4)

2007/03/16

【岩手競馬】存続の道は本当に閉ざされたのか?

Lets_go_on_michinoku_race懸案となっていた岩手県競馬組合に対する330億円の融資議案が、3月15日、岩手県議会の予算特別委員会・本会議で相次いで否決されたというニュースが報じられている。深夜の11時に近い時間帯に至ってからようやく開票作業が始まった本会議採決の票差は、賛成22・反対22の同数。最後は、議長の裁定によって「否決」が選択されるという微妙な決定であった。この数ヶ月間、県政界を舞台に堂々巡りの議論が続いてきた岩手競馬存廃の問題に対して議会が下した決断は「No」・・・・
競馬存続を強く支持してきた当ブログ管理人などは、地元メディアの報道を日々ウォッチしながら議会の動静に注目してきたが、統一地方選挙を目前に控えた浮ついたムードのなかで、議案のもたらす効果と可能性の検証や、競馬が廃止されたとき懸念される地域経済へのダメージについて真摯な検討が進められたとは、到底思えなかった。当事者意識と責任感が欠如した議員たちの手で、このような結論が導かれてしまったことは、返す返すも残念と言うほかない。

そもそも今回の融資案とは、競馬組合が負担する民間金融機関等からの債務を自治体からの融資で一括返済することにより、岩手競馬再生に向けた道筋をつけようというもの。毎年6億円以上に達する支払利息の負担を余儀なくされ、競馬事業の収益だけでは固定費を賄いきれなかった岩手競馬の体質を改善し、収支均衡の可能性に道を開くという意味では、一定の効果を期待できる処方箋と思われた。一方でこの議案には、「単年度で収支均衡できなければ競馬は即廃止」というプログラムも組み込まれており、仮に赤字による競馬廃止という事態に立ち至った場合でも、自治体、すなわち岩手県民による負担増加を最小限度に抑制できるという、もう一つの側面があった。いうなれば競馬主催者側の退路を断ったとも言えるアイディアで、これ以上の赤字拡大を懸念する「競馬存続反対派」にとっても、それなりに納得がいく選択肢となりえたはずだ。

県議会の「決断」は、そうした選択肢の芽を、有効な代案も検討しないままいきなり摘み取ってしまうようなもので、これでは競馬存続の可能性どころか、地域経済の行く末まで危うくなってしまう。

議案の否決により、主催者の県競馬組合、さらには組合を構成する自治体=県・盛岡市・奥州市(旧水沢市)がまず直面するのが、3月20日に期限の迫った金融機関に対する借入金の返済である。支払能力がなければ県競馬組合は経営破綻を強いられ、借金返済の責任は出資者である自治体に及ぶ。さらに競馬開催が事実上不可能となれば、2300人にも達するという関係者の雇用問題や、年300億円近くの売上喪失にともなう経済への悪影響など、県全体の没落・地盤沈下にも繋がりかねない難題が一気に噴出してくることは必至だ。財政規模の小さい奥州市などは、第2の夕張市とでもいうべきポジションにまで転落してしまうのではないかと、懸念する声も聞こえてくる。今回の否決で、基金取り崩しによる現金拠出という当座の責任だけは回避した格好の県議会も、もう知らん顔では済まされないだろう。

ちょっと話が大きくなりすぎけれど、いずれにせよ事態がこのまま推移するなら、ハードランディングによるショックが大きすぎる。まずは、その事実を直視すべきだ。地域経済の行く末はともかく、競馬存続の可能性に焦点を絞ってみても、関係者の雇用と競走馬の活躍の場を確保していくための知恵を、関係者一同が何とかして考え出す必要がある。
もはや昨年までの盛岡・水沢2場による通年開催は望むべくもないし、ばんえい存廃騒動のときのようなホワイトナイト登場も期待できないかもしれないが、たとえば、主催者に民事再生手続のようなスキームを適用して債務返済の負担を軽減したうえで、有形・無形の資産を売却。収支均衡が可能なスケールに開催規模を縮小し地域密着型の競馬を続けられる可能性は本当にないのか?そのためには、例えば、オーロパークで中央競馬全レースの馬券を発売する権利をJRAに有償譲渡したり、南部杯とダービーGPの開催権JBC問題で揺れる大井競馬にまとめて売り渡してしまうほどの大胆さが必要だろう。現主催者の背負う荷物を極力軽くしたうえで、最終的には、競馬の存続を政治の迷走に左右されない第三者の手に委ねることができれば、なお良いのだが・・・・

おりしも、融資議案が否決された当日、この4月から盛岡・水沢競馬場において中央競馬の全開催日に発売及び払戻を行う旨のリリースが、JRAから発表されている。競馬の存続が岐路に立たされたこの時期、あえてこのようなニュースが公にされる以上、岩手競馬サイドとJRAとの間で何らかの交渉がもたれ、少なくとも盛岡・水沢の競馬場設備維持を前提とした約束事が交わされたとみるのが自然だろう。レギュラーシーズンの開幕は難しくとも、舞台さえ残れば競馬存続の可能性はまだ消えていない。JRAの場外設備に全面転用という後ろ向きの決着ではなく、迫力にあふれた岩手の競馬をライブで残す方向でのウルトラCに、何とか期待をつなぎたい。

3月 16, 2007 岩手競馬 | | コメント (2) | トラックバック (7)

2007/03/12

「いのちに抱かれて」 崖っ縁ばんえい競馬からの再生物語

Inochi_ni_dakarete東京国際映画祭でグランプリを受賞、昨夏には全国公開され話題を集めた映画「雪に願うこと」の原作小説「輓馬(ばんば)」の著者・鳴海章氏の手による待望の新作が発刊された。「いのちに抱かれて-楓子と大地の物語」と題された本作は、350頁とボリュームもたっぷりな長編小説だ。
「いのち」という平仮名が思わず目を引くソフトなタイトル。パステル調の水彩で描かれる優しいタッチのカバーデザイン。いかにも女性読者に好まれそうな柔和な装丁を纏ったハードカバーを普通の人が書店で手に取っただけでは、そのなかに血湧き肉躍るばんえい競馬の世界が広がっているとは、とても想像できないだろう。しかしご安心あれ。「崖っ縁からの癒しと再生を描く、北の大地の感動物語!」と銘打たれた本作の中身は、前作「輓馬」でも描き出された、ばんえい競馬を取り巻く人々のリアルな息遣いを濃密に伝えてくるような、鳴海ワールドそのものである。

物語は、都会生活に疲れた三十歳のOL・楓子が、父の死をきっかけに生まれ故郷である帯広の馬産農家に戻ってくるところから始まる。実家の馬産に対しては全く無関心であった主人公が、身体が小さく競走馬になれるかどうかが危ぶまれながらも非凡な素質を秘める輓馬ダイチとの出会いを機に、廃業寸前の家業を引き継ぐことを決意。輓馬の世界を取り巻く人々との触れあいを通じて、強い馬づくりに心血を注いだ生前の父の情熱を知り、一歩づつ前進を始める・・・・それが本書のあらすじなのだが、頁をめぐりストーリーの展開を追いかけていくうちに、これとよく似た物語があることに気がついた。10数年前、全国に日本酒ブームを巻き起こした名作マンガ「夏子の酒」がそれだ。

Natsuko_no_sake蔵元の家に生まれたコピーライター夏子が、兄の死をきっかけに故郷に戻り、兄の遺した幻の米「龍錦」を育て日本一の酒造りに挑む・・・・「夏子」を「楓子」に、「」を「」に、幻の米「龍錦」を、伝説の名馬の血を受け継ぐ輓馬「ダイチ」に置き換えてみると、2つの物語の骨格はほんとうに相似している。それだけではない。酒造りの屋台骨を支える新潟の米づくり農家の置かれた状況にまで踏み込んで、現場が直面する悩みや矛盾を包み隠さず描き出したという意味で、「夏子の酒」は本格的農業マンガとしてもエポックメイキングな作品になったが、それと同様に「楓子とダイチの物語」においても、十勝の馬産農家をめぐる苦境がリアルな筆致で語られているのだ。

「馬って、いくらくらいで売れるの」
「ピンキリだけど、今だと四、五十万なんてのもある」
丈晴の表情がさらに厳しくなる。
「だけど、それはばんえい競馬に出られる馬の話。競りで馬主がつかんかったら、ひらたくいえば、売れんかったら馬は阿蘇へ(食肉用として)送られるんだ」
(中略)
「馬肉にする馬は、一キロ千円くらいで買われる。だから七百キロの馬なら一頭七十万円になるわけだ」
「何よ、競走馬より高いじゃない」
思わず声をあげたが、丈晴は黒い馬に目をやり、顔を撫でてやった。
~「いのちに抱かれて-楓子と大地の物語」より引用

馬に買い手がつかず、赤字経営で後継者もいないため、馬生産をやめていく農家が増えていく。競走馬専業だけでは経営を維持できず、酪農やめん羊など収入の柱になる品目を別にもたなければ、食べていくことさえ難しい状況だ。それでも経営を続ける農家は、馬を飼い続ける。なぜならば、十勝・道東地方に暮らす人々にとって、馬がそこにいるのは、水や空気のように当たり前のことなのだから、と作者の鳴海氏は先頃放映された「競馬ワンダラー~ばんえいに恋して」のなかでも語っていた。「大変な危機にある生産農家を何とか守らなければ、ばんえいの将来はない」(十勝毎日新聞 2007.03.07ばんえい競馬再生への提言より引用)そんな鳴海氏の状況への危機感がこの物語を生み出す強い原動力になっている。
果たして名作「夏子の酒」とも共通する物語のフレームが、意図的な本歌取りかどうかはわからないけれど、ややもすれば都会人の目線から牧歌的なイメージだけで語られてしまうことが多いわが国の農村の現況を、できる限り等身大で伝えようとするなら、都会人(楓子)が農村の暮らしに身を投じる構成を取ること自体、必然というべきだろう。
ここは、鳴海版「夏子の酒」というべき、この良質な作品を素直に楽しんでみたい。

もうひとつ本作を語るうえで、欠かせないのは昨年の11月突如として沸き起こった「ばんえい競馬の存廃騒動」をめぐる一節が、単行本化に際して、あえて加筆されていることだ。当時は、作者の鳴海氏自身、競馬場に隣接した駐車場に団結小屋を設置して、競馬存続に向けた運動に身を投じた経緯があるけれど、そんな事情が当事者の立場から語られているのが非常に興味深かった。「登場する人物・団体名とはすべて架空のものです」とは言うけれど、プレハブの小屋に立てこもり事務局役として奔走する「谷本調教師」の姿から、「谷あゆみ調教師」の風貌を連想してニヤリとしてしまうのは、おそらく自分だけではあるまい。東(西)騎手であるとか、関西出身の深井(浅田)騎手など、ばんえいファンにとってはおなじみの顔ぶれが署名活動に尽力する姿も描かれ、団結小屋の中でのインサイドストーリーが生き生きと伝わってくる。

前作で好評を博した迫真のレースシーンも、もちろん健在だ。とんでもないレースで言葉にできないとlandslider@地方競馬に行こう!さんも絶賛するばんえい記念の様子を見事に活写した「吹雪のばんえい記念」の章は、ある意味で本作のハイライトといえるのかもしれない。ちょっと立ち読みするだけでも感涙必至のパートなのだが、その「とんでもなさ」を味わい、体験していただくためにも、一人でも多くの読者に、この傑作を手にとってもらいたいと願う。

3月 12, 2007 書籍・雑誌 | | コメント (4) | トラックバック (1)

2007/03/11

【中山牝馬S】逃げ・先行馬苦戦の背景を考察してみる

中山牝馬Sの過去5年分のデータを遡って上位馬の脚質別成績を調べてみると、ちょっとビックリするほど明確な傾向が出てくる。逃げ・先行勢が軒並み苦戦を強いられる一方で、差し・追込勢が毎年のように上位を独占しているのだ。

■中山牝馬Sの脚質別成績傾向(過去5年)
Nakayama_hinba_stakes_0206





Asahi_rising_at_oaks_2006そもそも中山・芝千八といえば、コースの1周距離がわずか1667メートルとローカル小回り並みの内回りコースを使用するだけに、脚質的には先行有利が基本となるはず。実際、春開催中山の開幕週に施行されている同距離のG2戦・中山記念では、ここ数年、前に行く馬が優勢という傾向がうかがわれる。その開幕週から僅か2週間。馬場状態にさほどの変化もなく、同じAコースを使って行われる重賞競走なのに、これほどまでに決着傾向が激変してしまうというのは、ちょっと不可解な印象さえ受けてしまう。いったい何が逃げ・先行馬を苦しめているのだろう?そのヒントを探し出すため、とりあえず、各年のラップをチェックしてみた。

06年 12.4-11.4-12.1-12.0-12.2-12.5-11.8-11.8-11.6
05年 12.7-12.3-12.7-12.5-12.1-12.2-11.8-11.5-11.9
04年 12.2-11.2-11.8-11.6-11.5-12.2-12.0-11.5-12.1
03年 12.4-11.3-11.7-11.7-11.5-11.9-11.9-12.2-12.1
02年 12.1-11.3-11.7-11.0-10.9-11.8-12.1-12.5-12.0

当然のごとくハイペースの年もあれば、スローペースの年もある。02年~04年のようにレースの前半から11秒台が連続する慌ただしい前傾ラップになると、先行勢が苦戦というのは理解できるし、05年のように絵に描いたようなスローペース(前半1000メートル通過62秒3)では、2番手からレースを進めたウイングレットが無難に勝利を収めている。ここまでは一応、常識で計れる範疇だろう。ところが、昨年の例を思い起こしてみると、話はちょっと混沌としてくる。

前半1000メートル通過が60秒1。道中も6ハロン目に息が入っているようで、決して先行馬が失速するようなペースには見えない。ところが、4角時点で7番手あたりまでに位置していた組は人気のウイングレットを含めて総崩れ。ゴール前では中、道中後方に位置していた馬たちが中山の短い直線でも気を吐いて上位を独占という結果に終わってしまった。
緩めのペースでも先行馬が苦戦した原因の一つの仮説として考え得るのは、昨年の中山牝馬S当日の天候による影響である。この日(2006年03月12日)の中山競馬場では曇り空のもと良馬場でレースが施行されているが、南西方向から強い風(風速7メートルほど)が吹きすさんで、決着時計にもそれなりの影響を及ぼしたと手元のメモに記録が残っている。中山コースで南西方向から吹く風といえば、向正面では向かい風・ゴール前直線では追い風の形になる。つまり先行勢はバックストレッチを走行する間、終始真っ正面から風の抵抗を受ける格好になっていたのだ。一見、道中のラップが遅くみえたのは、そんなファクターも作用したせいと考えれば、先行勢にとって道中の負荷が数字以上に大きく、直線余力を残していた差し馬が台頭してきた結果も納得できるだろう。それでも前半1000メートルの時計がほぼ60秒フラットの水準なのだから、実は昨年の一戦も、本質的にはハイペースだったという解釈が成り立つのではないか?

過去5年のうち、昨年も含め4回がハイペース・・・・この傾向を生み出しているのは、おそらく中山芝千八の特殊なコースレイアウトだ。スタートして、各馬が初角に飛び込むまでの距離が僅か200メートルしかない。こうなると、どうしても先行争いは1コーナー過ぎまで持ち越されがちで、レースの流れもなかなか落ち着かなくなってしまう。
中山記念のように比較的少頭数のレースなら、ローエングリンバランスオブゲームなど力のある先行馬が発馬直後から先手を主張すると他馬は控えざるを得ず、隊列も早々と落ち着くわけだが、牝馬限定の多頭数ハンデ戦ともなれば事情は異なる。色気十分の軽ハンデの伏兵も含め、誰も彼もが1角めがけて殺到するので、毎年のようにいとも容易くハイペース気味の競馬が演出されるわけである。

そう思って今年のメンバーを見渡してみると、人気のアサヒライジングを筆頭に、前目の位置どりを確保したい思惑を胸に秘めた顔ぶれが目立つ。ハイペースの歴史は今年も繰り返されるのか?そんな展開を考慮し、差し馬の台頭には十分注意を払っておきたい。

結論
◎サンレイジャスパー
○キストゥヘヴン
▲ニシノフジムスメ
△アサヒライジング
注レクレドール
注ピアチェヴォーレ

午前中の早い時間帯に雨の予報も報じられており、馬場状態の悪化が心配だが、一応稍重程度のコンディションを想定して予想してみたい。風向きは、昨年とは反対に北西方向から秒速5メートルほどの強めの風が吹きつけてきそう。すなわち向正面では追い風、ゴール前で向かい風だ。前に行きたいクチも揃って、先行争いが1角過ぎまで混沌とする展開になれば、おそらくハイペース気味の流れが、そのまま数字になって表れてくるのではないか?

Sanrei_jasper_at_nigata_kinen_06狙ってみたいのは、やや力の要る馬場状態になっても能力が減退しない、パワーを備えた差しタイプだ。たとえば、サンレイジャスパー。昨年の夏シーズン以降、馬体の充実が著しく脚質の幅も広がってきた。京都牝馬S組の活躍が目立つ傾向からいっても、このローテーションは理想的で、府中牝馬ステークス2着当時の鞍上・中館騎手に手綱を委ねてきた陣営の選択から、勝ちたいという意欲がひしひしと伝わってくる。
Kiss_to_heaven_at_tokyo_shinbun_hai桜花賞馬キストゥヘヴンは、着順だけみると近走精彩を欠く印象はあるけれど、東京新聞杯当時のパドックを見る限り、数字以上に馬体を大きく見せており、華奢な印象を否めなかった3歳当時の面影はもう完全に払拭されている。良馬場とはいえ、雨の影響を受けた馬場で昨年のフラワーCを制した実績があり、この枠順から道中を上手く立ち回ることができれば、直線チャンスがめぐってきそう。これと同じ理由で、重馬場の新潟2歳Sと時計の掛かる芝で忘れな草賞を制しているニシノフジムスメを侮れない。さらには、ローカルの重い芝で良績を残すレクレドールピアチェヴォーレあたりへの目配りまでは必要かも。
対する先行勢では、やはりアサヒライジングの能力に一目を置かざるを得ない。なるほど、力の要る馬場は悪くないタイプだが、休み明けに加えハンデ56.5キロの条件が気がかり。人気と目方を背負って他馬のマークもきつくなる今回は、馬券的妙味からあまり食指が動かない。あくまで押さえ程度の評価とすべきか。

キルトクールは、この一戦で引退の花道を飾るというウイングレット。一昨年の優勝時と同じ55キロのハンデ・3勝を上げている千八の距離と条件は悪くないけれど、堅実な走りをみせるマイル戦ほどの確実性は疑問。また、繁殖入りしてからさらなる活躍を嘱望される大切な身体だけに、おそらく今回は無理をしないはず。

3月 11, 2007 07年競馬予想・回顧 | | コメント (2) | トラックバック (8)

2007/03/06

続・「有言実行」を担保するもの

謎の新社長・中尾公亮氏のもと、サウスニアRH広尾サラブレッド倶楽部としてリニューアルを遂げた経緯については、先のエントリでも触れたとおりであるが、今回はその続報を少々。
本日クラブから送られてきた小冊子のなかで、ようやく中尾氏のプロフィールの一端が紹介されていたので、まずはそれを引用してみる。

Profile-
Kohsuke Nakao : アメリカの大学・イギリスの大学院卒業後、英国屈指の商社ロンドンサラブレッドサービシスのジェイムス・ウィガン氏のもと、イギリス・アイルランドの牧場で経験を積み、帰国後、創業30年を越えるジャパンブラッドストックにてホースマンとしての仕事を磨く。のちに、リース種牡馬として、デインヒルやサンダーガルチ他を手がけ、幅広く競馬産業に貢献。活躍の場を広げている
広尾サラブレッド倶楽部
 代表者挨拶・所信表明の小冊子より引用

Hiroo_sc4_2何だかクラブ法人の代表者紹介というよりも、パリの三つ星レストランで修行してきた鉄人シェフの経歴みたいで、もうひとつピンとこない。肝心な情報は不足しているわりに余計な修飾語が多すぎるし、宣伝過多な印象は否めないけれど、現時点ではこれがクラブから公にされた唯一のインフォメーションである。
ちょっと調べてみると、プロフィール中に登場してくる「ジェイムス・ウィガン氏」(James Wigan)というのは、海外セリ市場の動向を伝えるニュースでちらほらと名前が登場してくる英国の有名エージェントで、最近だと、タタソールズ・ディセンバーセールで牝馬としては歴代最高価格を記録したマジカルロマンスの落札で話題を集めた人らしい(ネタは合田直弘氏によるニュース記事より)
ロスチャイルド財閥にも繋がるセレブなエージェント=ミスター・ウィガンと中尾氏が、現在いったいどれほど近しい関係なのか?公式発表による僅かな情報から、その全容をうかがい知ることは叶わない。けれど、リニューアル以降も外国産馬メインの募集ラインナップを堅持するというクラブの方針に沿って、海外の競走馬流通業界とのコネクションをアピールしようという意図はとりあえず読み取ることができる、そんな経歴紹介ではある。

一方、中尾氏自身が「ホースマンとしての仕事を磨いた」というジャパンブラッドストックといえば、インターネット上で血統データベースを運営している老舗サイトとしても知られているが、本来は競走馬の輸出入斡旋を生業とする輸入商社のようだ。
実は、サウスニアが昨年追加募集していた2頭(アルシラート、チェルシーザベスト)ファシグティプトン・コールダー2歳トレーニングセールで落札していたのも、この会社であった。そんな事実と、昨秋以降少しづつ表面化してきた中尾氏とサウスニアの関わり、さらには今回の社長就任という結論から推し量ってみると、中尾氏の立場というのは、当初から、クラブからの委託を受けたエージェントというよりも、経営と馬選びの全権を握る前提で主体的にサウスニアの運営権者として乗り出してきたのではないかと思える。広尾サラブレッド倶楽部へと看板をかけ替えたサウスニアは、良くも悪くもシンボリホースメイト時代からの継承云々ではなく、名実共に中尾氏が采配をふるうクラブへと変貌を遂げたわけである。

クラブ運営の背景や内情について特別な情報を得る立場にない、一介の出資者が知りうるのはせいぜいこんなところまでだろう。ちなみに今回のリニューアルに対する当ブログ管理人のスタンスは、あくまでニュートラルなもので、いたずらにそれを否定的に捉えようという意図はない。クラブの名称や勝負服の変更にも抵抗はないし、青いカラーで一新されたホームページのデザインも、案外悪くないなと感じている。
だが、先のエントリでも強調したように、出資者に対して公正なクラブ運営とそれを担保する情報開示こそが重要であるという見解は変わらない。既会員優先枠を設けた無料一口プレゼントも結構だが、派手なサプライズよりも、小冊子にひっそりと記された「会員のみなさまの立場にたった運営」、まずはこれこそが第一優先順位に位置づけるべき課題だろう。中尾新社長以下、新経営陣のお手並みを、まずはしっかりと拝見していきたい。

3月 6, 2007 ひとくち馬主日記 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/03/04

【弥生賞】2歳王者は無理をしない

Dream_journey_at_tospohai_06v広尾サラブレッドがらみのエントリ執筆でちょっと疲れてしまったし、ココログの記事作成ページが深夜になってやたらと重くなってきたので、皐月賞トライアルの予想は手短に。2歳王者ドリームジャーニーとシンザン記念を制したアドマイヤオーラ2強対決に注目が集まるが、まずはその2強の評価を考えてみる。

朝日杯では発馬失敗が怪我の功名になって、想定外の末脚を使えることがわかったドリームジャーニーだが、本来は好位~中団から鋭い決め手を生かしたい競走馬である。併せ馬の形でなくても自分から動いていけるタイプでもあり、後方待機の策には拘らない。今回は本番に向けてのトライアル。おそらくコーナー4回を通過するコースで、どこまで折り合いをつけられるか?という課題を設定しつつの競馬になるのだろう。蛯名騎手の心中を推し量るなら、好位~中団馬群のなかで我慢がきけばそれで良し、本番に向けてまだ無理をする必要はないといったところか?
対するアドマイヤオーラは、武豊に手綱が戻って、まさしく昨年のアドマイヤムーンの再現を狙っていることだろう。3~4角では馬群の外を回すことも厭わず、どれだけ良い脚を使えるかを計る戦法だ。シンザン記念でダイワスカーレットを下したレースぶりからも、前に強い目標がいれば末脚の威力はさらに増してくる。
実質小回り・先行有利がトレンドの中山芝二千の形態とAコースという施行条件を考えると常識的には前者が有利なのだが、開幕2週目・土曜日の最終レースなどをみても、そろそろ中山の馬場では差しも決まるようになってきた。一歩先に抜け出すドリームを目標に差す競馬ができる利に注目するなら、今回はどうやらアドマイヤのほうに一日の長がありそうだ。

<結論>
◎アドマイヤオーラ
○メイショウレガーロ
▲ドリームジャーニー
△ココナッツパンチ
注サムライタイガース
注インパーフェクト

2強以外の馬たちについても評価していくと、まず前走500万下クラスで2着以下に敗退している馬ではまったく勝負にならない。そんなタイプは過去10年15頭の出走履歴があるけれど、3着以上に食い込んだ実績はゼロである。そんなわけで馬券を買うなら、前走重賞でも一応格好をつけていた馬が狙い目だろう。
サンツェッペリンが淀みないペースで逃げきった京成杯は、3~5着馬(アルナスライン、マイネルヘンリー、ダイレクトキャッチ)がいずれもその次走を勝利するなど、今にして思えば、質の高いメンバーが揃った1戦だった。そこで2着したメイショウレガーロは、当然重賞上位級の強い馬と判定できる。前走では序盤から手綱を抑える形だったが、それ以前のレース内容を思い起こしてみても、本来は行く気に任せて先行したほうが面白そうだ。折り合い最優先で道中無理をしないドリームジャーニーも、馬群の捌きに手間取る可能性がありうる。それならば、2着候補はこちらを上位に取ったほうが妙味があるかもしれない。以下では、わずか1戦のキャリアながらココナッツパンチの前走も時計・内容とも見どころがあって侮れないと評価。

キルトクールは、マンハッタンバー。前走500万下で3着に敗退している馬にまで、出番は回ってこないだろう。

3月 4, 2007 07年競馬予想・回顧 | | コメント (0) | トラックバック (4)

2007/03/03

「有言実行」を担保するもの

Hiroo_sc2新人騎手・調教師もデビューし競馬の暦が替わる3月第1週。所属クラブの「リニューアル」にともない、オフィサーをはじめとする我がひとくち愛馬たちの所属先・勝負服も変更されることになった。社名は「サウスニアレースホースクラブ」から、本社移転先の地名を冠した「広尾サラブレッド倶楽部」へ。
海老茶、白一本輪、白袖」の勝負服も「青、袖緑一本輪」へと模様替えされる。
昨年暮れの2歳馬募集の頃から、クラブ側が「変革」と称して試行錯誤してきた運営見直しの帰結が、今回のリニューアル実行ということなのだろう。だが、これら一連の「変革」は、残念ながら必ずしも既会員の支持を受けてきたとは言い難い。

セールス面では、昨夏に話題を集めた追加募集馬2頭の登場に始まって、お友達紹介キャンペーンにキャンセルセール、さらには募集馬のお買い得パックセットと様々な新企画が打ち出されてきた。これらの試みだけなら、趣味の善し悪しはともかく「商売っ気が出てきましたねぇ」のひと言で済んでしまうのだが、クラブゆかりの牝馬の産駒を「プレゼント」と称し、新規会員限定の無償募集まで行ってしまった「お試しキャンペーン」・・・・これだけはさすがに軽率だったと思う。ネット界隈のサウスニアンからは、一斉に非難の声が湧き上がり、クラブとの訣別を宣言する会員も続出するという騒動にまで発展したこの出来事。既会員へのホスピタリティよりも、近視眼的に新規の出資者をかき集めることに軸足を置いた施策が、長くクラブに慣れ親しんできた既会員たちの反発を受けてしまうのは当然だろう。
一方、クラブ運営の要というべき募集馬の選定・育成・管理という側面では、現2歳世代の募集から「中尾公亮氏」なる謎のエージェントが登場。クラブが馬選びの統括を全委任し、中尾氏の厳しい相馬の末に選び抜いた精鋭11頭を集結させたという触れ込みのもと、新規の募集が開始されている。育成に関しても、従来のファンタストクラブ一辺倒から「預託予定調教師が信頼関係を築いている育成牧場に移動させ、それぞれの厩舎のカラーに見合った育成調教」を施すという方針転換が進められた。これらの「変革」は、クラブ内部における経営陣交替と機を一にした動きと思われたが、驚いたのは、今回のリニューアル実行と同時にその「中尾公亮氏」本人が、クラブの代表取締役の座に就いているという事実だ。

3月3日からオープンした「広尾サラブレッド倶楽部」の公式サイトを訪問し、「Debut!」と記された青いバナーをクリックすると、中尾氏による代表取締役社長就任の挨拶が読める。いわく、「具体的な目標を掲げ、その達成にむけ、高いアベレージを誇るクラブとして成長を遂げてまいりたい」とのこと。
数値目標
を掲げるという方針自体、時流にマッチした経営姿勢といえそうだが、その具体的目標とは以下の数字である。

(1)クラブ募集馬のうち、9割以上をレースに出走させる。
(2)クラブ募集馬のうち、6割以上を勝ち上げる。
(3)クラブ募集馬のうち、2割以上をオープン馬にする。

手元のデータで集計してみると、00年の前回リニューアル以降、このクラブが募集した競走馬で、中央地方を問わず出走歴があるのが75頭勝ち上がったのは38頭、障害を含めてオープン入りできたのが3頭(スターリーヘヴン、ペルフェット、オフィサー)であった。6年間の募集馬の総数がいったい何頭になるのか?正確な数字がつかめなかったが、仮に90頭ほどとするなら、一応、現状からのレベルアップを前提に設定した厳しめの目標数値といえる。
とはいえ、目標を立てるだけなら誰にでもできること。クラブ運営に対する周囲の信頼を勝ち得ようと言うなら、その達成に向けたプロセスを、出資者の目に見えるように具体化することこそが、新たな経営陣には求められていると言うべきだろう。
中尾新社長の言によるなら、「育成パートの強化」が「素質ある馬の芽を摘むことなく、各馬の長所を最大限発揮させる運び」になるということだが、何の前提もなく突然「素質ある馬」と言われても、それを担保するのは、社長の相場眼だけか?!と、疑問のひと言も呈したくなる。

結論を言おう。
今回のリニューアルにおける最大の問題点は、なじみの薄い新社名や勝負服のデザインの良し悪しでなく、クラブの経営と馬選びを一手に牛耳ることになった新社長「中尾公亮氏」の顔・プロフィール・競馬の世界に携わってきたキャリアが、会員に対して一切オープンにされていないことだ。
一説によると牧場経営者出身?との噂もあるようだが、クラブから一切公式発表がない以上、軽々にそれを信じることもできない。例えば、ラフィアンの岡田繁幸氏のような存在なら、代表者のパーソナリティ・立ち振る舞いがそのままクラブの運営方針であり、出資者も岡田氏を信頼すればこそクラブと運命を友にするという信頼関係が成立する。しかし、現時点でも謎のエージェントの域を出ない中尾社長の場合、打ち出した目標を信頼し、ますますのご支援をと言われても、マルーン(海老茶)カラーに慣れ親しんできた既会員は戸惑ってしまうばかり。それが正直なところだろう。

リニューアルを告知するパンフレットに記された「有言実行」というスタンス (※あえて誤字の件には触れない)。クラブとしてそれを標榜するのであれば、まずは「有言」への信頼を担保する情報開示をすみやかに進めることだ。会員・出資者からの信頼獲得に向けた道筋は、そこが出発点になる。目標や結果もたしかに重要だが、それより何より、クラブの運営姿勢にこそ会員は視線を注いでいる。新経営陣は、そのことを肝に銘じ、会員にとって納得性の高いクラブ運営に努めてもらいたい。

3月 3, 2007 ひとくち馬主日記 | | コメント (2) | トラックバック (0)