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2006/10/20

そんな謝罪では競馬が危ない

416771711501_ss500_sclzzzzzzz_v39838854_凱旋門賞に出走したディープインパクトから禁止薬物が検出・・・・不世出のスターホースに降りかかった騒動は、一夜あけても収まる気配をみせず、各方面に波紋を広げている。競馬ファンの裾野を大きく広げた日本最強馬の凱旋門賞挑戦という「夢」物語に、まさかこんな「悪夢」の結末が用意されていたとは、いったい誰が予測できただろう?いずれにせよ、今回の一件がディープインパクト、さらには日本の競馬界全体に対して大きなマイナスイメージをもたらしてしまったのは否定できない。残念である。
不幸中の幸いと言うべきか? 仏国サイドからは「不正行為をする意図があったとは思えない」など、ディープを擁護する声が上がっており、厩舎サイドの故意あるいは重過失を裏づける材料も出ていない。そのせいか、現時点では日本のマスコミ各紙の論調にも、あからさまに厩舎や関係者を非難するトーンまでは見られないようだ。だが、薬物検出が動かしがたい事実である以上、競馬に対する「信頼の回復」は、喫緊の課題と言わざるを得ないだろう。その責務を担うのは、やはり中央競馬の主催者たるJRAをおいてほかにいない。すみやかな真相の究明と、オープンな情報公開、さらには再発防止に向けた道筋の具体化など、今すぐにでも取り組むべき課題は山積している。

ところが、昨日の記者会見におけるJRAの対応。これがいけなかった。
自ら会見に出席せず、書面を通じてコメントを明らかにした高橋理事長は、まだ事件の全容が明らかになっていないのに、今回の一件を「栄誉ある凱旋門賞に汚点を残す結果」と断定。その一方で、会見に出席した役員は、日本とは薬物規制が異なる海外への遠征について、「全責任は馬主と管理する調教師にある。検疫や禁止薬物、治療の許容限度などが違うが、それについては十分な説明をしてきた」と、自らの責任をたな上げにするような発言まで行っている。

もちろん、遠征中の飼養管理にかかわる直接的な責任は、調教師・馬主が担っている。それは当然のお話であり、国内競馬の主催者に過ぎないJRAが、海外における所属馬の一挙手一投足にまで監督責任を負っているわけではない。しかし、今回の凱旋門賞遠征という壮挙に際し、組織を上げてのプロモーション活動を展開し、ファンの関心の盛り上げに一役買ってきたJRAには、競馬に対する「信頼回復」という大きな責任があるはずだ。それにもかかわらず、当事者意識を欠くと受けとめられかねない、こんな発言を残してしまったのは、いかにもまずい。案の定、一部マスコミからは、JRAの姿勢に対し疑問を投げかける記事が公にされることになってしまった。

サンスポ.com
禁止薬物にJRA知らんぷり「全責任は馬主、調教師にある」

危機管理の視点から、企業不祥事やトラブルに際しての謝罪のあり方を論評している田中辰巳氏の著作「そんな謝罪では会社が危ない」(文春文庫)によるなら、企業・組織が「お詫び」をすべき場面で犯してしまいがちな失敗には、いくつかの典型的パターンがあるという。いわく「言い訳や反論混じりの謝罪」「嘘と隠蔽をふくむ謝罪」「曖昧にボカした謝罪」などなど・・・・。
田中氏の分類を参考にするなら、今回の一件に関するJRAの対応のまずさは、事実確認が不十分な段階にもかかわらず「汚点」というダーティーな表現でマイナスイメージを増幅させてしまった「早とちりの謝罪」、さらには競馬ファンや国民に対してではなく「栄誉ある凱旋門賞」に謝罪してしまったというトンチンカンな対応、すなわち「頭を下げる方向を間違えた謝罪」と言えそうである。さらには、これだけの大事件にかかわらず、トップの高橋理事長が自ら会見場に足を運んでいないという点では、「役者不足の謝罪」という印象も否定できない。
おそらく「嘘や隠蔽」がない分、まだ救われてはいるが、競馬の信頼回復という喫緊の課題に向けて、自らの責任の所在を明らかにするという意味では、不満の残る対応だった。また、いかにも配慮を欠いた発言がディープインパクトという名馬の傷に塩をすり込む行為に映ったのも、不用意だったといえないか?

ディープインパクトのみならず、競馬というジャンル全体に注がれる世間の疑念やマイナスイメージは一刻も早く払拭しなければならない。また、今回の出来事が、筋道を間違った規制強化や自粛ムードにつながって、ディープのみならず今後海外遠征を志す日本の競走馬にとって、障害になるような決着も避けなければならない。そのためにも繰り返しになるが、今、JRAが取るべき対応は、真相の徹底究明と情報公開、再発防止策の明確化に尽きる。競馬の未来に禍根を残すような事態を回避するためにも、JRAには当事者意識をもって、全力を尽くしてもらいたい。

10月 20, 2006 日記・コラム・つぶやき, 書籍・雑誌 |

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コメント

はじめまして。
ディープの一件を見て、僕もJRAの管理能力の低さを露呈したなぁという印象をもちました。
特に高橋理事長のお粗末なコメント一番凱旋門賞に汚点を残したのはJRA自信の気がします。

投稿: はじめ | 2006/10/21 20:09:20

>はじめさん

自ら競馬の危機を呼び寄せてしまうような、軽率な理事長コメントでした。翌日以降の新聞記事で「汚点」という表現が一人歩きしてしまったのは残念です。

投稿: 山城守 | 2006/10/22 14:10:22

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