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2006/09/20

【山中千尋】叩き2枚目で本領発揮!

Lach_doch_mal_by_chihiro_yamanakaジャズ界の最強牝馬・山中千尋が放つ約1年ぶりのオリジナル・アルバム。昨秋にユニバーサル・レーベルに移籍してメジャーデビュー後、第2作にあたる本作に対しては、早くも各所から最高傑作!との呼び声もかかっているようだ。アルバム・タイトル「ラッハ・ドッホ・マール」とは、ドイツ語で「とにかく笑おう」という意味。思わずウルフルズのあの歌を思い浮かべてしまうけれど、中身は紛れもない本格的ジャズピアノトリオ作品である。恒例になっていた、日本の名曲カバー(中島みゆきとか、はじめ人間ギャートルズとか、ペギー葉山の学生時代など)も、今作では収録されていない。

初回限定盤のみの特典として、彼女の演奏シーンを収録したDVDがグリコおまけとして付いてくる。それを楽しみに、当ブログ管理人も発売当日に近所のCD店でいそいそと購入してきたわけだが、お家に帰ってパッケージを開封してみると、なぜか肝心のDVDが見あたらない。「何故だぁ?!」と思い、CDの現物をしげしげと観察してみると、そこにはしっかりと「通常盤」のシールが貼り付けられている・・・我ながら、この引きの弱さよ!思わず唖然としてしまうばかりである。

しかし、CDで聴ける演奏のほうは、評判に違わず素晴らしい。
山中千尋といえば、その容貌や、澤野工房からのデビュー当時に名付けられた「ピアノの歌姫」という異名が象徴するように、叙情的な歌心あふれる演奏というイメージで語られることが多いけれど、実際にライブ演奏を目の当たりにしてみると、そんな軟弱な印象は木っ端微塵に吹き飛ばされてしまう。踊る筋肉に飛び散る汗。いったいあの華奢な身体のどこに動力源があるかと訝ってしまうほどのスピードとダイナミズム。それこそが彼女の演奏の真骨頂だ。

競馬に例えるなら、芝の中距離戦を牝馬らしい一瞬のキレで差しきるタイプというよりも、中山のダート千二でテンからガリガリと押していくあの感じに近い。とにかくスピードの絶対値が違うのだ。血統的には良血のサンデー系ではなく、むしろ身体能力の高いミスプロ系のノリだろう。だが、けっして一本調子ではなく、奥深い底力の裏づけやスケール感も漂わせているあたりは、母系に入っているリボー系の為せる技だろうか?(嘘)

前作を含む過去の作品では、ややもすると熱いライブ演奏とクールなスタジオ録音との間に、ちょっとした温度差のようなものが感じられたものだが、今度の新譜ではそれが確実に縮まっている。本作に収録されている山中オリジナルの「2」や、ジェリ・アレンの「4」、マッコイ・タイナーの「10」などでは、これぞ山中千尋!というべきダイナミズムが爆発しており、まるで筋肉の躍動を間近で見せつけるかのような演奏に思わず手に汗を握ってしまう。ピアノを電子楽器に持ち替えてソリッドな演奏を披露する「7」から、ラグタイム風のレトロな味付けでいながら、ピアノの一音一音が確信に満ちあふれた音色で彩られた「8」に至る流れも、今作の聴きどころと言うべきだろう。録音が良いのも特筆もので、真夜中に比較的小さな音量で再生しても、演奏の迫力が失われないところがまたよい。

メジャーデビューの直後で、イントロデューシング・チヒロヤマナカに終始した感のある前作と比べても、今作の完成度は数段上のレベルにある。初戦を叩いて確実に良化を示した感が強い今回の新譜。ジャズに興味が薄い方にも自信をもってお薦めできる一枚で、ひとりでも多くの人に耳にしてほしいと切に願う。

9月 20, 2006 音楽 |

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コメント

おはようございます。TB、ありがとうございます。
そう、いいですね、『Lach Doch Mal』。山中千尋さんにしてやられた感じです。
そして、競馬用語(?)のリボー系などよく分からないけど、よく分ったような気がする山城さんのレビューも楽しませてもらいました。
では。
kenyama

投稿: kenyama | 2006/09/20 8:32:43

kenyamaさん。山中系ブログ(?)の大御所から早々にコメントを頂戴し、恐縮です。

>山中千尋さんにしてやられた感じです。

正直なところ、Universal a Go Go!!のライナーノーツで、山中さんがラグタイム風のオリジナル曲を評して「次の私のアルバムの小さな予告編にもなっています」とコメントしたとき、若干の不安を感じたものですが(笑)、それが今作のような形で結実するとは嬉しい驚きでした。
28日の秋葉原イベントにも足を運びたいけれど、行けるかどうかちょっと微妙な情勢。ともかく、ひと皮剥けた感のあるライブ演奏を早く目の当たりにしたいものです。

投稿: 山城守 | 2006/09/24 1:47:23

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