山中千尋「Universal a GO GO!!」 気ままに楽しむ絶妙の選曲

ピアニスト 山中千尋の手によって選曲されたジャズ・コンピレーションアルバム。
「Universal a GO GO!!」・・・・超訳すると「気の向くままにユニバーサル」といった意味合いだろうか?そんなタイトルも示すとおり、ユニバーサル系レーベルの楽曲限定という「縛り」はあれど、アルバムに収録された15曲は、古今東西ビ・バップから洋楽ポップスまで自由奔放、けして一つの方向に収斂されそうにない多彩な内容となった。
きっと、選曲者にとっても楽しい仕事だったのだろう。次の本人コメントからも、そんなウキウキするような気分がそれとなく伝わってくるのがよい。
今回のコンピレーションに寄せて
ジャズという地域(ジャンル)は曖昧であり常に広がっているので、その境界線を見つけるゲームに陥りやすい方が多いのでしょう。このコンピレーションは、そんなゲームの手を休め、ご自身と音楽の境界線を忘れて聞いて下さることを願って、選曲を心がけたつもりです。私の場合を言えば、音楽は血液の中にすっと入ってきて、生きている上で他の何にも代え難い感覚に集中させてくれます。その感覚を言葉にするのは難しいですが、音楽に言葉は元々必要ありませんので、あとは音楽に任せます。・・・・(後略)
~山中千尋「Universal a GOGO !!」ライナーノーツより引用
そもそも音楽好きにとって、他人のレコード棚をのぞかせてもらうというのは、とても興味深い経験である。逆にのぞかれるほうもコレクションにそれなりの自負をもっている場合だと、自慢の一品をこれみよがしに取り出して、思わず「どうだ!」と相手を唸らせたくなってしまいがちだ。しかし、山中さんの場合、そのようなマニアックな力みとはあくまで無縁である。美貌のピアニストの音楽的嗜好はどんなものか?と興味津々のファンのスケベ心をスルリとやり過ごすように、あくまで小粋に自然体で趣味の良い楽曲を並べている。
アート・ブレイキー、オスカー・ピーターソン、キャノンボール・アダレイといった大御所の演奏にはじまり、ブラジルの国民的シンガー=エリス・レジーナ、さらにはクインシー・ジョーンズのフュージョンにカーディガンズまで。このアルバムのためにセレクトされた演奏者のネームバリューはなかなかのものだが、選ばれた楽曲は、「誰もが知っている古典的定番」と「知る人ぞ知る隠れた名曲」の中間あたりに位置するものが多いように思える。いうなれば、ど真ん中の絶好球でもないし、暴投気味のくそボールでもない。次から次へとストライクゾーンぎりぎりの低めにコントロールされた絶妙の配球が続いていく感じである。そんな選曲に耳の肥えたファンも思わず唸らされてしまうわけだが、その一方でジャズの世界をあまり知らないビギナーでもすんなりと楽しむことができる。また、全体を通じカラフルで明るめの曲が多い印象も受ける。そのあたりにも山中さんが心がけたという「ご自身と音楽の境界線を忘れて聞いて下さることを願って」というコンセプトが生かされているのだろう。
ところで、今回のアルバムには、山中千尋さん自身の演奏による2曲の新録トラックも収録されている。いずれも1分そこそこの小品なので、これを目当てにアルバムを購入するとちょっとガッカリすることになるかもしれないが、演奏にはレトロなラグタイム風の味付けが施されており、今までの山中節とはかなり雰囲気を異にする仕上がりである。ライナーノーツでの楽曲紹介によるなら、これが「次の私のアルバムの小さな予告編」ということらしい。いったい山中ワールドは、これからどんな方向に展開していくのか?ファンにとっての興味は尽きない。
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