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2006/03/22

「廃競馬場巡礼」 ディープで優しい異色の競馬紀行

調べてみた。ビックリだった。
A4のノートに過去の競馬場があった場所の名を記していったら、なんと3ページも埋まってしまったのだ。その数およそ150。そして廃止された時期が、戦前と昭和30年前後に集中していることもわかった。
これは早いところ調べておかないとマズイんじゃないか。直感的にそう思った。今のうちに語り継ぐことが必要なのではと思ったのだ。
 ~「廃競馬場巡礼(案内人・浅野靖典)」より引用~

hai-keiba-joh-junrei今やその痕跡を僅かに残すばかりとなった、全国各地の廃止競馬場の遺構めぐりをテーマにした奇書である。「案内人」を名乗る著者は、元・グリーンチャンネルの中央競馬中継キャスター・浅野靖典氏
甘いマスクと爽やかな語り口で知られるあの浅野さんに、こんなディープな嗜好があったとは、思いもよらなかったけれど、ほんとうに人は見かけによらない。JR全線を踏破した経験をもち、ホームページなどを拝見しても東へ西へとかなり無茶な旅打ちを続けてきた方だけに、とにかくフットワークが軽いのだ。今はなき廃競馬場の跡をたずね歩き、記録や土地の人たちの話から、ありし日の草競馬の様子を蘇らせようという今回の試みを、浅野氏は「まったくの趣味」と謙遜するけれど、実際にその成果として結実した1冊を手にとってみると、やはりこれは前人未踏の壮挙じゃないか、という思いが強くなる。
施設が取り壊され整地も済んだかつての競馬場跡地を探索し、そこに残された道路の形状をなぞりながら、美しく弧を描く1~2コーナーの姿を感じてみる。競馬場が健在だった当時の情景をまぶたにうかべ、ゴールをめざす馬たちドロンドロンの馬券オヤジたちの賑わいを想像してみる。ハッキリ言って、こうした感性は誰にでも共有できるものではない。けれど、競馬を慈しむ筆者の視点の優しさに触発され、読む側も思わず当時の情景にタイムスリップしたような気分を味わうことができる。そこがまた良い。

まだ廃止の記憶が新しい中津競馬場に始まって、いまや公営ギャンブル不毛の地と化している宮城県の仙台・石巻競馬場、・・・・さらには、九州東海岸にも別府→延岡→都城→鹿屋と転戦を続ける草競馬ロードが実在したことなど、全国各地の昭和の競馬に関する知られざる事実が次から次へと紹介され、筆者はその遺構を丹念に踏破していく。だが、それだけではない。冒頭の引用部分にもあるように、全国各地にかつて150も存在していた競馬場の所在地を日本地図に示した巻末の「全国競馬場一覧」が圧巻である。沖縄を除く46都道府県のすべてに、競馬場があったのだ!
さすがに戦前に廃止された競馬場などは、今となっては資料も乏しく、その有様を知ることはかなわない。だが、人々が集う町があればそこに競馬があったという事実は興味深いし、かつて土地土地に確かに存在していた熱気のようなものを想像してみるのは、とても楽しいことだと思う。

ちなみに、グリーンチャンネルでは、4月から筆者の浅野氏を「案内人」とした新番組「競馬ワンダラー」の放映が予定されているらしい。番組のテーマは、「日本各地の競馬にまつわる場所を訪ね歩き、現在進行形の競馬に触れるだけでなく、長い日本の馬事文化から、競馬の歴史を振り返り、競馬に思いを馳せるココロの旅」(グリーンチャンネルHPより)・・・・ううむ、いいですねえ。予告編では、はっぴいえんどの名曲「風をあつめて」をバックに旅する浅野氏の姿がオンエアされていたけど、細野晴臣のボソボソとしたボーカルを聞いているうちに、自分も何だか競馬をめぐる旅に出たくなってきました。
「廃競馬場巡礼」のテレビ版として、浅野氏の旅がどこに向かっていくのか? 大いに期待してみたい。

3月 22, 2006 書籍・雑誌 |

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コメント

ご無沙汰です。

いいですよね、この本。
廃競馬場ではないですが、盛岡も移設していますよね。昔はそれこそ水沢の方が立派で、盛岡は丘陵地にあったのでコーナーがきつくジェットコースターのような競馬場と言われてましたっけ。
(さすがにその時代に競馬見てたわけじゃないですが....。)

この本読むと、旅打ち魂に再び火がついてくるんですよね....競馬場以外にも競馬関連で見る場所が増えましたし。また重賞もない平日にぷら〜っとどこかの地方で競馬見てると、作者の方が現れるんですよねぇ、で2〜3日後に別の競馬場でまた現れて....毎回これですわ(笑)テレ東の矢野さんとかもそうなんですが(^-^;;

ではでは。

投稿: てつじん | 2006/03/23 0:21:31

てつじんさん、コメントありがとうございます。
競馬関連では、ほぼ同じエリアで行動していながら、正月以降お目に掛かる機会がないのが残念です(笑)
旧盛岡競馬場。私も実際に足を運んだ経験まではないのですが、大昔(昭和40年代?)の学生時代に裏方でアルバイトをした人の話を聞いたことがあります。あの本に出ている「事件ファイル」のとおりというべきか?牧歌的で、かつ程よく鉄火馬の雰囲気を漂わせた楽しい場所だったみたいです。

投稿: 山城守 | 2006/03/26 3:30:01

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