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2005/11/18

ファインモーションのように 上原ひろみ「Spiral」

B000AU1M48若手の女性ジャズピアニストの代表格として、何かにつけ山中千尋と比較されることが多い上原ひろみバークリー音楽院出身の経歴であるとか、NYを活動拠点に据えていることなど、確かに両者の共通点は少なくない。だが、世間的認知度という点では、一歩早くメジャーブレイクを成し遂げた上原のほうが数段リードしているようだ。ライブの観客動員数ひとつとってみても、品川ステラボール(750席)の前売りを3日連続でソールドアウトしているのだからすごい。単純に考えると、同じ会場を1日だけ使っていた山中千尋の3倍はファンがついている計算になる。アルバムの売上げ比較なら、その差は10倍以上だろうか?

その上原ひとみが先日リリースした3作目のアルバムが「Spiral」
実は、この人の作品を1枚通しで聴いたのは今回がはじめてなのだが、なるほど、評判にたがわぬ豊かな才能がアルバム全編に横溢した意欲作であった。

3人で演奏する音で、オーケストラのような音楽をつくりたい」・・・・ライナーノーツに記されたこの上原本人の発言が、今作の特徴を端的に物語っている。特にアルバムの前半部は、まさしく一つのコンセプトで統一された組曲のように展開していくが、緻密な計算をもとに構成された壮大なアレンジと、緊張感あふれるスリリングな演奏が聴きどころといえるだろう。3人編成のオーソドックスなピアノトリオ作品でありながら、エレキベースにシンセサイザーを乗っけるコンテンポラリーなバンドのスタイルも、そんな印象をより効果的に強調している。ジャズ的でルーズな即興性とはほど遠く、スイングする感じとは無縁の世界。集中して聴いていると少々肩がこるのも確かなのだが、とにかくスケールの雄大さは特筆ものである。
競走馬に例えていうなら、あくまでジャズという文脈のなかで鍛錬した筋肉を躍動させ極限の切れ味を追求する山中千尋がスイープトウショウなら、ジャズの土俵をまったく意に介さず異種格闘技戦的な音楽世界を標榜する上原ひろみからは、3歳当時のファインモーションのような底知れぬ才能の恐ろしさが感じられる。

面白かったのは、おまけにつてきたDVDのライブ映像だ。
曲目は「カンフー・ワールド・チャンピオン」 ブルース・リーとジャッキー・チェンに感化を受けて出来上がった作品ということだが、トレードマークのぼさぼさ頭で、シンセとアコースティックピアノを忙しく往復しながら弾きまくる上原ひとみの姿が実に楽しい。視覚的な印象だとYMO当時の矢野顕子みたい(?)にみえるだが、演奏そのものから立ちのぼってくる熱気とグルーヴ感は、レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴを彷彿とさせる。もしドラマーがジョン・ボーナムだったら、さぞかし凄い演奏になったことだろう(笑) ライブ映像のさわりの部分は、公式サイト中の「Spiral tour」のページでも楽しむことができるので、ぜひお薦めしたい。

11月 18, 2005 音楽 |

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