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2005/09/13

【衆院選回顧】「わかりやすさ」の正体とは何だったのか?

下馬評どおりというべきか。いやいや、ここまでのワンサイドゲームは、当事者も含め誰も予想できなかったというのが本当だろう。小泉・自民党の圧勝劇に終わった衆議院選挙。この結果を評して、夕刊タブロイド誌には、「この国の民主主義は死んだ」とか「この選挙結果は狂気の果てだ」などと、もはやヤケクソとしか思えない見出しが踊っている。オールド・リベラリスト(ただし穏健・日和見派)を自認する当ブログ管理人なども、シンパシーを感じないわけではないけれど、こんなときだからこそ、冷静に結果を振り返って後のために何か教訓をすくい上げておくことが大切だと思う。今日の回顧が明日の糧になると信じるのは、競馬ファンの習性として誇るべき美徳の一つなのだから(笑)

さて、今回の衆議院選挙を象徴するキーワードとして、メディアなどで盛んに論じられていたのが「劇場型選挙」という言葉である。面白い見せ物みたさに舞台の前の集まってきた国民大衆を前に、とても「わかりやすい」勧善懲悪のスペクタクルを披露し、ヤンヤの歓声をあびてみせたのが小泉自民党の勝因というわけだ。確かに、観る者の期待をあおる前宣伝からはじまって、個性的役者のキャスティング、舞台効果を狙った派手な演出などなど、今回自民党がすすめた選挙戦略には、ハリウッド映画のヒット作などのプロデュースと共通した臭いを感じる。まるでショービジネスの世界を模倣したような戦略を選挙に持ち込み、巨額の興行収入に匹敵する大勝利を収めて見せた・・・・もしも仕掛け人がいるなら、影で思わずにんまりしているところだろう。

そんな自民党の提示した舞台装置のカラクリを暴こうとしながら、結局、引き立て役という役回りに終始してしまったのが民主党だ。代表個人のきまじめなキャラと党のイメージをだぶれせPRしようという意気込みは感じられても、それが逆に娯楽色の乏しさ(?)という印象の弱さにつながってしまい、観客の興味を惹きつけるには至らなかった。なんとなく低予算の良心的作品が、ハリウッド超大作に駆逐されていく様をみるようで、悲しい。
だが、岡田代表の国会答弁の音声をモザイクのように散りばめてしまい、観る者に散漫な印象しか残さなかったあのテレビCMなどをみても、結局、両党の選挙戦略の巧拙が大きく明暗をわける結果につながったことは間違いない。そのような図式を評して、大西宏のマーケティング・エッセンスさんがなかなか巧いことを言っている。「時代劇は黄門さんが勝つにきまっている」と・・・・

小泉さんの『改革』という水戸黄門の印籠、また「殺されてもかまわない」という覚悟の潔さ、悪代官よろしく郵政族を追い出し、また刺客をはなって懲らしめる舞台設定などの巧みな演出によって自民党支持への圧倒的なエネルギーが生まれ、雪崩を打ったように自民党大勝の結果となりました。時代劇は、黄門さんが最後に勝つに決まっているのです。
マーケティングの世界では、マーケットがまるで小選挙区制度のように、トップでないと生き残れない時代になったといわれてきましたが、むしろ今回の参議院選挙は、小選挙区制度はマーケティング、特に競争戦略の巧みさ、また拙さによってドラスティックに結果が変わることを見せつけたように思います。
大西宏のマーケティング・エッセンスさんより引用~

マーケッティングの専門家でもない自分が出しゃばる話でもないのだが、この議論をさらに発展させてみよう。

今回、小泉自民党が、顧客たる国民の前に提示して見せた選挙の構図マーケティング戦略と言い換えても良い)を評するなら、そのポイントは大まかに言って次の3つの視点になるだろう。これが「わかりやすい」とバカ受けし、少なからぬ人々の投票意欲(購買意欲)を刺激。普段は行かない投票所に足を運ばせる原動力になったのではないかと思うのだ。

1.トピックはたった一つであることを強調する
答えは「YESか、NOか」・・・・二者択一で選べばよい。選挙権のない小学生でもすぐに手を挙げて答えたくなるようなお手軽な設問である。
しかも、そのお題目が、いつの間にか誰も反対しようがないような論点にすり替わっていったのがミソ。「郵政民営化賛成か?反対か?」→「小さな政府か?大きな政府か?」それでも、まだ分かりづらい?そんな人には「既得権にしがみつく郵政公務員のために改革を止めますか?」とくる。ここまで親切に説明してもらえると、もう反対の選びようがないでしょ(笑)
でも、権力の頂点に座る内閣総理大臣が、特定の労働者階層をつるしあげ名指しで攻撃しているというのは、冷静に考えるとかなり異常な風景である。しかも、その労働者が別に国民の税金で養われているわけでもないという事実は、あたかも瑣末なお話であるかのように、ほとんど触れられない。

2.貴方が関係する、大事な問題であることを意識させる
郵政改革なくして、次の改革には進むことができない」・・・・世論調査の結果などをみても、郵政改革が国政の最優先課題だと思っている有権者は決して多数ではなかった。けれど、壇上から絶叫する首相のこんな言説にコロリと説得されてしまった人も少なくなかったようだ。自分が投票所に行かなければ「郵政改革が止まってしまう」→「次の改革への道筋も塞がれてしまう」という危機意識をあおる手法。「今買わなければ売り切れてしまいますよ」という切迫感をテコに、顧客の当事者意識を喚起する古典的セールストークを彷彿とさせるが、意外と現代でも使える場面があるということか。
次の改革」の内容にあまり深入りしないことも、商売のポイント。できるだけ、多くの顧客を引き寄せておくためには、同床異夢の仕掛けも必要である。

3.仮想敵との対立の構図を引き立たせる
刺客だとか、くのいちだとか・・・・ワイドショーや井戸端会議には、うってつけの新鮮なネタを提供することも大切だ。ヒール対ベビーフェースの世紀の対決をショーアップしてみせておけば、政策論争だとか小難しい話は脇に置いても、万事OKということ。幸いなことに、リングにあがりたい目立ちたがり屋の勝ち組さんは、今のご時世、人材に事欠かなかった。
結果として最もこの戦法の打撃を被ったのは、直接的な仮想的である抵抗勢力(郵政反対派)よりも、この問題に関してヌエ的態度に終始した野党第1党だったのは、思わぬ副産物だったのかもしれないが・・・・

評価に関してはやや刺激的な表現になってしまったが、この3つのポイントはどれをとってみても、顧客の関心をわが方にひきつけ、商売を成功に導くために、意外と有効な手法だと思う。
国民というマーケットのうえに漂う「気分」を的確にとらえ、それをキャッチしそうな商品を最適なタイミングでリリースする。そのためには、マニフェストであるとか説明責任であるとか小難しい理屈は不要だ。そこを見切ったうえで、マスメディアも自らの土俵に引き入れ、短期集中的な商品宣伝を大量投下することに成功した小泉自民党は、勝つべくして勝ったといえる。

だが、大西宏氏もブログでコメントしているように、マーケットの気分は常に移り気である。冷静に振り返ってみれば子供だまし、一歩間違えれば悪徳商法スレスレとも思えるセールストークが効いて、今回は商品を買ってくれた一見のお客の支持を、小泉自民党がいつまでつなぎ止めておくことができるのか?いずれ、思わぬ形で手痛いしっぺ返しが待っているのではないかという思いを禁じ得ない。願わくば、それが政治的無関心層のさらなる増大という最悪の形であらわれなければよいのだが。

9月 13, 2005 日記・コラム・つぶやき |

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 自由民主党と民社党の2大政党の対決だとか、争点は郵政民営化だとか・それだけじゃ 続きを読む

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» 拝啓、小泉純一郎 様 トラックバック KAIGAN
第44回衆議院選挙の開票結果は以下の通りでした。 (Yahoo!ニュース - 特集 2005年衆院選より抜粋) 自民  296 公明    31 民主  113 共産    9 社民    7 国民    4 日本    1 大地    1 諸派    0 無所属  18結果は皆さんご存知の通り、自民大勝。民主惨敗。 自民党が勝つだろうとは予想してたけど、まさかここまでとは。 というのが正直... 続きを読む

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ついに決戦の日がやってきました。 郵政民営化が正しくないことは、先日のエントリで証明しました。このような亡国政策を推し進める小泉自民党に対して、はたして国民は「No!」を突きつけることが出来たのかッ!? 私の予想では、小泉自民党の圧勝です・・・!!... 続きを読む

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刮目しよう!! 我が国は、正真正銘、『独裁国家』になりました。 国民の政治的自由は失われ、日本国憲法は、実質上、廃止されたのです。 続きを読む

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コメント

TBありがとうございました。現在、ココログにはTBできないみたいなので、コメントでお返しいたします。

今回の選挙のキーワードが「わかりやすさ」だったのは間違いないでしょうね。ただし、本当に「理解できた」のでなく、「なんとなく分かった」気にさせるものであり、少し考えれば如何に空虚であり暗闇に向かって飛び込もうとするものでしかなかったと、私は考えるのですが。そう思うと、小泉流アピールもさることながら、「シングルイシュー」の威力の高さと日本人特有の「熱しやすく冷めやすい」気質が、今回の「自民圧勝劇」を生んだのではないでしょうか。

そう考えると、某夕刊紙にあった「民主主義は死んだ」というのも決して大袈裟とは言えないかも・・・・

投稿: ジョカトーレ・F(F's blogroom管理人) | 2005/09/13 20:31:11

ジョカトーレ署長、毎度どうも。
「熱しやすく冷めやすい」国民気質が、いったいどこに向かっていくのか?これからのわが国の行く末を考えると、期待よりも不安がやはり先に立ちますね。

私事で恐縮ですが、昨夜、職場のオッサンたちとの飲み会で選挙のことが話題になったとき、実は誰も自民党に投票していないことがわかって、全員顔を見合わせ思わず苦笑する場面がありました。自分も含め、この人たちはみな平凡な勤め人=典型的な無党派層の感性をもった人々です(鈴木宗男の娘は意外とかわいいなという見解も全員一致しました・・・笑)

そんなことを考えると、一体誰が小泉自民党を熱狂的に支持しているのか?ちょっと実感がわかない感じもします。気がつかないうちに、我々が少数派になっているのでしょうか?「人気に踊らされず」「確信をもって穴を狙う」競馬ファンの感性が、これからの世の中で冷静なスタンスを保持するために、意外と大切になってくるのかもしれません。

投稿: 山城守 | 2005/09/15 0:53:26

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