« 【回顧と考察】函館はカミソリ、新潟・外回りはナタで切れ | トップページ | 【函館2歳S】好位差しの経験が上位進出の条件に »

2005/08/06

【書評】G1勝利の方程式 調教師の語った馬券本

g1_shirai_honスペシャルウィークアグネスデジタル、そしてメイショウボーラーなど錚々たるG1馬を管理してきた栗東の名伯楽・白井寿昭調教師にスポットライトを当てたインタビュー本である。聴き手に回っているのは、競馬予想TV!でお馴染みの予想家・井内利影氏

調教師の手による競馬本といえば、藤沢師の「競走馬私論」森師の「最強の競馬論」がよく知られているが、内容的には、駆け出し時代から成功を手にするまでの自伝的お話や、競走馬という生き物を管理するうえでのノウハウを語ったものが多かった。外部からは知ることが難しいインサイドストーリーの趣があり、もちろん読み物としては面白いのだが、それでは本から得た知識が馬券に直結するかといえば・・・・「?」 そこに書かれているのは、あくまで調教師の視点からみた競馬であり、馬券を買うファンの側から見るなら、厩舎の思惑を推理するための参考にはできても、馬券作戦の決め手というには、いささか高尚すぎるお話だからだ。

ところが、白井師のこの本の場合、少々趣が異なる。自厩舎における調教の考え方や管理馬の足跡を語っているのは、定番の調教師ものと同じでも、実際に話題にしているのは、いかにも馬券に直結しそうな「瑣末な」ネタがほとんどなのだ。たとえば、「栗東から新潟競馬場への輸送は5~6時間でいけるけど、福島だと13時間くらいかかる」とか、「追い切りで1600m走ってバタバタになった馬でも、1200m出走なら好走がありうる」とか。
特に興味深かったのは、「日本一血統にうるさい調教師が語る馬造りの血統論」の部分だ。

たとえば、ブライアンズタイム産駒は鉄砲駆けしないとか、競馬ファンにはよく知られるセオリーがあるけれど、この本で語られるBT産駒(オースミステイヤーなど)の特徴と照らし合わせてみると、なぜそんな傾向になっているのかがストンと理解できた。また、現役時代スリムな体型だったスペシャルウィークの産駒は、ややもすると馬体が大きくなりすぎるきらいがあり、小柄で軽い繁殖牝馬と配合したコンパクトなタイプが走るなどというエピソードも、実におもしろい。現役時代のスペシャルウィークを自らの手で管理してきた師だからこそ語れる、値千金の馬券ネタである。

もともとこの本の下地になったのは、馬券攻略雑誌(競馬王)に連載されたインタビュー記事らしいのだが、雑誌読者のニーズを考慮し、聴き手が馬券に役立つ話題を引き出そうと腐心しているのがよくわかる。だが、それ以上に、白井師自身が立場をよくわきまえ、ファンに向かい平易な語り口で、馬券に役立つ様々なトピックを解説しようという姿勢が感じられるのがよい。
まえがきにも述べられているように、白井師は、競馬サークル外からこの世界に飛び込んできた経歴を有するのだが、一競馬ファンだった当時は、銭湯で湯から上がると、牛乳びん片手に新聞の競馬欄を食い入るように見ていたとのこと。いまだに「一般人の感覚」を競馬ファンと共有としている師が語るからこそ、「馬券本」としても楽しめる好仕上がりの一冊になったといえるだろう。

8月 6, 2005 書籍・雑誌 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/33923/5328948

この記事へのトラックバック一覧です: 【書評】G1勝利の方程式 調教師の語った馬券本:

コメント

コメントを書く