【有馬記念回顧】「もはやサンデー産駒ではない」ゼンノロブロイ
勝ったゼンノロブロイが東の横綱なら、タップダンスは西の横綱。以下、古馬の大関クラス=シルクフェイマスにダイタクバートラムがこれに続き、平幕優勝の経験をもつ関脇デルタブルースがその次に入線・・・・終わってみれば、出走馬の「格」がほぼ正確に着順に反映される平穏な決着だっとと思う。
Photo:(C)Horses.JP(この画像の無断転載・複製はご遠慮ください)
状態不安を囁かれていた西の横綱だが、いざゲートが開くと、不安など微塵も感じさせない堂々たる逃げっぷり。こうなると、もう伏兵による小細工など通用する余地もない「力比べの競馬」になるしかない。
ラップを振り返っても、道中ペースの凸凹があまり見られないフラットな流れである。ハイペースとはいえ緩急変化への対応が着順を分けた昨年の有馬より、レースの質としては、明らかに今年の宝塚記念に近い。こんな流れ、本来なら瞬発力勝負をモットーとするサンデーサイレンス産駒にとって最も嫌な展開と言えるはずだ。しかし、そんな「不利」をまったく苦にすることなく、逆に力でねじ伏せてしまったゼンノロブロイ。ペリエの好騎乗もお見事だが、それに難なく応えてみせたこの馬自身、凡百のサンデー産駒とは異なるオールマイティな資質の高さを、結果で示してみせたと言えるだろう。
「タップダンス=サンデーの天敵説」を拠りどころに、「少なくとも両横綱のワンツーはない」と安易に判断していた私のような生半可な予想では、逆立ちしても取れない馬券だった。素直に脱帽するばかりである。
■04年有馬記念ラップタイム
7.0-11.6-11.5-11.7-12.3-12.4-12.0-11.7-11.8-11.9-11.6-11.6-12.4
■参考03年有馬記念
7.0-11.2-11.2-11.2-11.6-12.3-12.9-12.6-12.2-12.7-11.7-11.7-12.2
■参考04年宝塚記念
12.6-10.7-11.0-12.1-12.1-12.5-11.9-12.1-12.0-11.4-12.7
以下、出走各馬の次走に向けてのメモを整理してみよう。
1着 ゼンノロブロイ
TARGETによるPCI(ペースチェンジ指数)を確認すると「50.2」。これは、ロブロイ自身がほぼ前・後半に差のないラップを刻んでいることを意味している。その結果、推定上がり3ハロンも35.3と、JCや天皇賞で見せた瞬発力勝負とは明らかに質の異なる競馬を試みたことがわかる。これは、本来タップダンスシチーが最も得意とするペース領域のはず・・・・言うなれば、今回は相手の土俵に懐から飛び込んで、正攻法で寄り切ってしまった印象だ。強い。死角がみえない。
もはや、この馬サンデー産駒ではないのかもしれない(^^;
2着 タップダンスシチー
一連の「不安説」を陣営の三味線と捉える向きもあるようだが、今さらながら佐々木師の発言をおさらいしてみると、1週間前の時点と直前では明らかにトーンの違いがみられる。「好調時に比べると七、八分という感じ」→「追い切り後の気配はかなり良くなっているから自分の形で運べれば力は出せるはず」・・・・さらには、レースが近づくにつれ、ゲート不安であるとか、枠順に対する不満であるとか、馬場状態など、調子以外のファクターを気にする「泣き」の発言が増えてきたのが、今にして思えば師の真意を読み解く鍵であったかもしれない。
やはり、自信はあったのだ。少なくとも馬の状態に関しては。
「状態の不安は解消した。あとは条件さえ整ってくれるなら力は出せる」素直にこう言ってくれればいいのに・・・・と思うのは、やはり素人考えだろうな(^^;
3着 シルクフェイマス
タップダンスシチーに比べると、この馬の状態に関する陣営の発言には、特に屈折したところがなかった(笑)しっかりと乗り込み本数を消化しながら、思惑どおり馬体も回復。パドックの姿も、だいぶ本来の状態に近づいている印象を受けた。
現状では西の大関という評価がピッタリだが、正横綱は無理でも張出横綱くらいまでなら出世の可能性は残されている。来期の宝塚記念、東の横綱が海外遠征で不在の隙をついて、父の足跡をなぞるG1勝利のチャンスが訪れるかもしれない。
4着 ダイタクバートラム
直線入口ではコスモバルクと前後する後方の位置から、よく追い込んでいる。
このレースで上がり3ハロン34秒台をマークしたのは、この馬とサンデー産駒の3頭のみ。これがこの馬の本質を良く表していると思う。どちらかといえば底力比べよりも、スローの決め手勝負歓迎のタイプだろう。持続力が売りのダンスインザダークというイメージではなく、瞬発力のサンデー系という分類がよく似合う。
11着 コスモバルク
残念。力を出し切れていない敗戦である。
抑える競馬を試みると戦前から囁かれていたが、あの位置取りは意図したものというより、単に行きっぷりが悪かったせいらしい。
五十嵐騎手、田部調教師の発言を総合すると、敗因は言い古された言葉になるが「目に見えない疲れ」。9月の北海道優駿出走から数えて5走目、そのすべてがタフな競馬だったことは、確かに考慮すべきだった。また、輸送負担を軽減するために選択した大井競馬場入厩→美浦トレセン短期滞在という慣れない環境が逆に災いしたと言えるのかもしれない。ともあれ、これが力負けではないということだけはハッキリしているので、東西両横綱を倒せる資格をもった前頭の元気者として、捲土重来を期待したい。
12月 28, 2004 競馬予想・回顧アーカイブ | Permalink
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コメント
山城守さん、こんばんわ。
ラップの考察記事、興味深く拝見し、同様の感想を持っていた私は、今回の直線で氷つきましたです。
スローで瞬発力勝負の競馬が大勢を占める中、逃げ馬の存在は競馬を盛り上げてくれますね。
投稿: 桂馬 | 2004/12/28 1:24:36
桂馬さん、コメントありがとうございます。
強い馬が見応えあるレースをしてくれると、馬券をハズしても気分爽快で悪くないです。WP7では、なかなか逃げ馬が勝てないので、苦労しますが(笑)
投稿: 山城守 | 2004/12/28 22:59:53
山城守さん,はじめまして。それと共に,トラックバックありがとうございます。
ゼンノロブロイが「東の横綱」で,タップダンスシチーは「西の横綱」という表現というか,この記事における番付は良くできるなと思います。確かにレースぶりを見てみると,そんな感じもします…。
それにしても,ゼンノロブロイの強さには感動すら覚えました。今までタップダンスシチーが連対したレースにサンデーサイレンス産駒は絡んでこなかったのに,それをとうとう破ってしまいましたし。また,ゼンノロブロイの血統を見ると5代前までにインブリードがないようで,これもまたインブリード全盛の時代に対する反骨心が垣間見えます。
あと,タップダンスシチーの能力もやはり捨てたものではないというか,調子が悪かったのを考慮してかほとんどの馬が侮っていたようで,もしペリエ・ロブロイがタップダンスシチーを意識していなかったら,多分逃げ切っていたように思います。
投稿: 真流 | 2004/12/28 23:42:08
こんにちは。TBありがとうございました。タップが勝つときは4ハロン目あたりからペースダウンするんですよね。今回は微妙なペース。その分差されたのでしょうが、マイペースだったけど少し速かったのが、まだ本調子でなかったってことなのでしょうね。またよろしくお願いします。
投稿: SEABLOG | 2004/12/29 10:09:53
有馬記念エントリにコメントいただいた皆さま、ありがとうございます。
>真流さん
ブログを拝見させていただきました。ラップ、騎手、血統とたいへん深みのある分析で、大いに参考になります。
ロブロイの血統については、よく母父マイニングという部分を引き合いに出し、距離不安を指摘するムキも多いようですが、この秋3戦の成長をみるかぎり、そんな単純な見方では捉えきれないサムシングがあるようです。ご指摘のとおり、シンプルなアウトブリードという点に、妙味があるのかもしれませんね。また、あらためて血統表を眺めると、父方のターントゥと母父のミスプロ以外、現代の主流血脈につながる部分(自分の場合TARGETを使って色分け表示しています)が意外なほど少なく、種牡馬としてもかなり活躍できる可能性を感じます。海外遠征も現地に腰を据えてじっくり闘えば、それなりに健闘してくれそうです。
>SEABLOGさん
完調手前だったとはいえ、タップも力を出し切って強い競馬をしていましたね。
直後でマークしているのがヒシミラクル1頭ならともかく、ペリエがあの位置に陣取って終始プレッシャーをかけてくるのですから、キツイ競馬だったという見方もできると思います。
投稿: 山城守 | 2004/12/29 18:52:04
こちらこそ,「参考になる」とおっしゃっていただきありがとうございます。
私はオグリキャップの時から競馬にずっと触れてきたのですが,その影響か互いに力を出しきってほしい気持ち,チャレンジするようなレース選びをしてほしいという気持ちは強いです。あるいは的場均さんのような勝負に徹する人に高い評価というか好感を持っています。
血統に関してはゲームで勉強したというのもあるのですが(苦笑),「競馬予想TV」というスカパーのフジテレビでやっている競馬番組に出てくる人たちから多くを学んだ部分もあります。
あと,山城守さんの記事には考えるところが多いです。これからも通い詰めたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
投稿: 真流 | 2004/12/29 21:19:54
真流さん、コメントありがとうございます。
血統を頭に入れるためには、確かに何かきっかけが必要ですね。私もゲームは好きですし、ダビスタなど系統名のマスターにはなかなか有用なところもあるかなと思っています。「競馬予想TV」は出演者同士のケンカなど見ていると面白いのですが、個人的にK谷氏の予想に納得できる根拠が感じられないこと(M上氏は嫌いではありません)、それから土曜の夜に2時間もテレビに費やすのがもったいないので、ブログを始めてからはほとんど見ていません。そんなわけで、この間グリーンチャンネルをみたら、たくみふぢお氏の名前表記が漢字になっていたので、びっくりしました(笑)
ともあれ、今年もよろしくお願いします。
投稿: 山城守 | 2005/01/01 0:25:05