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2004/12/17

【岩手競馬ピンチ】マーケット・インの発想を忘れていないか?

iwate2004困ったことになってきた。
年の瀬も押し詰まったこの時期になって、にわかにクローズアップされてきた岩手競馬の存廃問題。当初は、11月に県競馬組合が公表した改革の実行計画(アクションプラン)を叩き台に再建に向けた議論が進むかに思えたが、再建を後押しする知事側と県議会との間に生まれた溝は日に日に大きくなり、結局、競馬組合への融資を含む予算案そのものが否決される結果となってしまった。

その結果、岩手競馬が直面することになったのが、今月末時点で計23億2700万円といわれる資金ショートの問題である。
みちのくレースのおたのしみさんの記事を参考にすると、競馬開催1日あたり売上は約3億円。つまり、8日分の開催での売上に匹敵する資金が足りない!というのだから、途方もない話といわざるを得ない。存亡の瀬戸際と新聞記事は評しているが、確かに民間企業なら倒産の窮地に立たされているところだ。
予算案否決後も、「資金ショートを回避すべく努めたい」と発言する増田知事の後押しがあることから、おそらく、年を越せずにギブアップという最悪のシナリオは回避されることだろう。ただし、年越し資金にメドが立っても、巨額の負債を抱えながらの自転車操業という構図そのものは、来年以降も温存されることになる。依然として、ノーアウト満塁のピンチであることに変わりはなく、予断は許さない状況である。

それにしても、いったい全体、何でこんな窮地にまで追いつめられてしまったのか?このピンチを打開する手立てはないものか?
そんなことをあれこれ考えながら、あらためて、競馬組合改革の実行計画岩手競馬のHPで閲覧可能)を読み直してみた。増田知事が「乾坤一擲の計画」と自讃しながら、議会の理解を得るには至らなかったあの計画である。するとなるほど、随所に計画の甘さが目についてしまう。
まず問題になるのは、平成3年のピーク時(690億円)との比較で約半分にまで減少した売上高(15年度367億円)を反転させ、10年後に465億円の馬券発売収入をめざすという拡大基調の売上目標設定だ。縮小均衡路線に走ることなく、売上拡大をめざすという意気込みは買えるし、その志の高さは評価しよう。しかし、実施具体策のレベルまで立ち入って中身を検証してみると、やはり心細い印象を免れないのだ。

たとえば、営業活動強化による「集客効果」という項目。21年度には70億円の売上げ増をめざすというが、その中身とは何のことはない、コアな馬券ファンの財布からさらに60億円お金を引っ張り出そうというお話である。「重要顧客感の造成と仲間づくりの支援」というコンセプトが掲げられているが、具体策として考え得るのはサポーターズクラブなどの組織拡充か?あるいはマイレージ制度の導入か?いずれにせよ、60億もの巨額なお金を引っ張り出すため、周到に練っておくべき戦術がまだまだ見えない。
さらには、「民間委託等」による200億円の売上目標・・・・・・。「競馬場・テレトラック(場外売場)での発売払戻業務委託」「インターネット投票等の導入」「JRAレースの受託発売促進」が事業概要として掲げられているが、これらの施策で売上増のカンフル剤として期待できるのはJRAの発売拡大くらいなのではないか?これとて今までのように「ひさしを貸して母屋取られる」を心配しながら、細々と発売しているようだと、百億円単位の売上増に貢献する材料とはなりえないと思う。

しかし、何よりも気になるのは、計画全体が「プロダクト・アウト」的な発想を基調に、まとめられていることである。競馬冬の時代と言われる現在の状況に照らし、はたして、これが今採用すべき戦略なのか?個人的には、疑問を禁じ得ない。

たとえば競馬組合が、再建に向けた営業戦略の基本に打ち出してきたのは「リマインド岩手競馬」というキャッチフレーズ・・・・すなわち、岩手競馬を「思い出してもらう(連想してもらう・認知度をあげる)」ことで、顧客を呼び込もうという発想である。なるほど、歴史的な馬事文化という背景や、数々の強豪馬を輩出してきた伝統、さらにはオーロパークというJRAにまさるとも劣らぬ優良施設を擁するみちのくレースの「商品性」に魅力があることに間違いない。しかし、それを「思い出してもらう」だけで、競馬場に人が集まってくる時代でもないだろう。ウチの商品は優れているのだから、認知してもらえば売れるはずという発想自体に、供給サイドが陥りがちな「奢り」や「甘え」があるといったら、言い過ぎだろうか?

今、競馬主催者(さらには、その委託を受け実質的に競馬を取り仕切るであろうライブドアのような企業)に求められるのは、「プロダクト・アウト」ではなく、「マーケット・イン」の発想法だと思う。「はじめに顧客ありき」「マーケットありき」の考え方である。供給サイドの事情を優先して市場に商品を投入するのではなく、まず顧客のニーズは何か?マーケットはどこにあるか?を、発想の原点にすること。「乾坤一擲の計画」に欠けているのは、まさしくこんな視点である。
そもそも、計画中には「マーケット」「市場」という言葉が一度も登場していない。「顧客」という言葉も、先に触れた「重要顧客感の造成と仲間づくりの支援」の箇所で2度ほど使われているだけだ。馬券という商品を買っていただく、顧客・マーケットの分析なくして、有効な戦略・戦術をどうやって組み立てるというのか?「とりあえずインターネット販売をはじめれば馬券は売れる」のではなく、インターネットと親和性の高い顧客のニーズをどうやって汲み取り、(潜在的に)求められている商品をカタチにしていくか?ここまで踏み込んで考えないと、「リマインド」という折角のコンセプトも絵に描いた餅に終わってしまう公算がきわめて高い・・・・。

ううむ。思わぬ長文になってしまったが、言いたいことはまだ半分くらいしか書けていない。次回記事では、もう少し具体策レベルに踏み込んだ、いくつか提言をまとめてみたいと思う。
それからこの記事は、色々と厳しいことも書いているけど、岩手競馬再建を願う立場からの愛のムチです。ひとまず、自分の旗色は鮮明にしておきます。

12月 17, 2004 岩手競馬, 日記・コラム・つぶやき |

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コメント

岩手競馬の問題点は結局、肥大化した負債、経費だから、これにメスが入らない限り再生はムリ。
>>供給サイドが陥りがちな「奢り」や「甘え」があるといったら、言い過ぎだろうか?
これが全てを言い表している。実際、「乾坤一擲の計画」も銀行にゾッポをむかれ、甘く見ていた議会からもダメだしされた。
売上は下がっているいとはいえ300億は売り上げているのだから廃止なんて本来的にはおかしいんだけどね。
再生の可能性は大いにあり。一回倒産する必要はあるが、廃止とは別。

投稿: 雪男 | 2004/12/17 11:28:54

雪男さん、コメントありがとうございます。
八方塞がりの現状ではありますが、岩手競馬支持派の自分にできることはやっておこうと思い、これからテレトラック三本木へ水沢競馬の馬券を買いに行きます。

>再生の可能性は大いにあり。一回倒産する必要はあるが、廃止とは別。

なるほど、一度倒産させるというのは、案外よいアイディアなのかもしれませんね。
岩手競馬が現在置かれている苦境(資金繰りの圧迫)の主たる原因は、売上に対し過大な負債を背負っていることにあるわけですから、その原因を根本から絶つには、痛みを伴う荒療治を視野に入れる必要もあるでしょう。確か、民事再生法は「あらゆる法人」に対し適用可能な法律ですから、岩手県競馬組合がこの法律により「事実上の倒産」→「法的手続による再生」という道筋を歩んだとしても不思議はありません。
ただし、世間の受けとめ方として、倒産という言葉はかなりのマイナスイメージで捉えられるだろうし、「倒産」後も盛岡・水沢の2場体制を維持できるかどうかは、難しくなるかと思います・・・・。さて、どうなることか?

投稿: 山城守 | 2004/12/18 11:38:23

イメージなら地に落ちていると思いますよ。
報道しない、出来ない部分(関連二社の財務状況など)はマイナスイメージが膨らみますね。
なんにでも言えますが、(何かを)守るため本体を殺すのは本末転倒です。仮に2場体制を維持できなくても競馬を存続させる方が優先事項であることは明らかでしょう。
繰り返しますが300億の売上と廃止は違和感があります。
300億売り上げる為にはどうしても現在の経費が必要だとすればそれは地方競馬の完全な敗北でしょう。
そんなはずは無い訳で、効用の限界を間違えているだけですから方法論を探るとすれば、リバースしかない。と思います。
とはいえ。
現状では廃止が既定路線だと思います。資金ショートを回避したところで、一時しのぎに過ぎないことは明らかです。売上向上を目指すにもまさに一連のイメージ低下というハンデをいたずらに背負い込むというマイナスリスタートです。
だからこそ、「廃止」の質を考えなければならないと思います。
現体制仕組みでの廃止に留めて、再開の余地を残しての廃止ということが必要ではないでしょうか。

投稿: 雪男 | 2004/12/21 15:44:44

雪男さん、貴重なご指摘ありがとうございます。
トウケイニセイ記念はパスしましたが、土曜日のテレトラック(宮城県)で水沢の馬券を買ってきました。自分のみるかぎり、お客の入り自体に大きな変化はみられず・・・・。岩手県内では一連の報道によるイメージ低下が深刻なのかもしれませんが、こと売上げに関してはやり方次第でまだまだやれる余地はあるのでは?とも感じています。
しかし、問題なのは正常な売上げを確保しているのに、深刻な資金難に陥っている現実ですね。どこかで負の遺産を清算しないかぎり、再生は難しいと認識は、私も雪男さんと一緒です。「廃止」の質を考えなければならないというのは、厳しい見方だとは思いますが・・・・。
いずれにせよ、重荷を整理し、競馬組合による主催という方式そのものを見直す必要があるのかと、考え始めています。


投稿: 山城守 | 2004/12/22 1:43:35

お久しぶりです。岩手競馬は民間出身のトップの下で精力的に運営していたという印象があったのですが、それが全く裏目に出たということなんですね。
1月から馬券の方式も増えますし、中央との相互発売も可能になるのでいろいろ工夫の余地はあるかもしれません。私案としては、JRAの2場開催の時に地方を一つ加えて3場開催の形にして、人馬の交流レースをやるようにしたらどうかと思います。来年のカレンダーを見ても2場日は27日あるので、多少は地方の収入増とともに、騎手の交流促進によって騎乗機会に恵まれない中央若手騎手の騎乗回数増にも繋がるかもしれず、中央側にも多少のメリットがあるような気もします。
以前、ウインズでJBCを売った時のように、発売場所が別で馬券の種類も別となるとちょっと購入意欲が殺がれるので、あくまでも、同じスキームで買えるようにすることが鉄則でしょうが・・・

投稿: 雲國 齊 | 2004/12/23 5:31:51

雲國齊さん、コメントありがとうございます。
「全面廃止」という最悪の結論を回避するために、できることはすべて考えてみるべきでしょう。
いっそのこと、JRAの軍門に下って、南部杯・ダービーGPを含む盛岡開催の発売委託を任せてみてはどうでしょう?受託手数料の設定がポイントにはなるものの、売上自体、飛躍的に伸びることは確実です。競馬法の制約は法改正でクリアできるので、あとは条件闘争でしょう。もちろん三連単・三連複の発売が前提条件になりますが。

投稿: 山城守 | 2004/12/24 1:04:40

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