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2004/11/23

Bank Band「沿志奏逢」 限りなき欲望と対峙するコンセプトアルバム

11月11日付の記事でレビューした井上陽水のトリビュートアルバム。個性的なカバー曲が居並ぶなかでひときわ異彩を放っていたのが「限りない欲望」を演奏したBank Bandである。バンクバンド?聞き慣れない名前だな、と思っていたら、聞こえてきたのはミスチルの櫻井和寿が歌うインパクトのあるヴォーカル。そう、このバンドは、櫻井とプロデューサーの小林武史を中心に特別編成された5人編成のユニットだったのだ。
「バンクバンド」という名前は、そのものズバリ「銀行バンド」という意味らしい。とはいっても、銀行馬券のようにガチガチに堅い楽曲を演奏しましょうというのではない(あたりまえか・・・・笑)

櫻井和寿、小林武史、坂本龍一の3人が資金を拠出し設立した非営利組織=「ap bank」の維持資金を捻出するために活動するバンド、というのがBank Band結成の目的であり、命名の由来でもある。ap bankは、自然エネルギーや様々な環境事業に対し、低金利で融資を行うことを目的とした機関。貸金業法による登録も済ませ、既に事業を開始しているという。ミュージシャンによるチャリティ活動の類なら珍しいものではないけど、一過性のイベントに終わることなく、事業体として組織的・継続的な活動を志向しているというのがなかなか興味深い。

B0002ZMB0A.09.LZZZZZZZ.jpgそのBank Bandが10月に発表したカバーソング・アルバム「沿志奏逢(そうしそうあい)」 夏の青空を思わせる背景色に、黄色い花はつけた大きなキュウリの実を乗っけたイラストがCDジャケットを飾っている。ベルベット・アンダーグラウンドのバナナ(アンディ・ウォーホール作)に似ているけれど、あくまで胡瓜というところがポイントである。小林武史いわく、ウォーホールが大量消費社会を逆手に取ったアイディアで製作したバナナに対し、家庭菜園で取れたキュウリを対置することで「大量消費社会のままでいいわけがないし、その想いも含めて」メッセージを表現したのだという。こんな逸話が象徴するように、アルバムの中身のほうも単なるカバー集に終始することなく、「未来、人間、環境」という一貫したメッセージのもとに、曲目が選ばれ、構成されたコンセプトアルバムに仕上がっている。

アルバムのハイライトは、やはり「限りない欲望」(井上陽水)から「マイホームタウン」(浜田省吾)へと曲が連なっていく中盤戦だろうか。人々にとって宿命のごとき欲望が、経済・産業を発展させていく。パワーショベルで丘が削られ、赤茶けた工業地帯の町にニュータウンができる。そこで生まれた育った若者たちは、希望のない仕事(人々の欲望が形を変え、高度化したものと言い換えても良い)に追われ、いつの日にか町を出て行くことを夢見ている・・・・というストーリー。鬼気迫るばかりの迫力で演奏される「限りない欲望」から、一転して淡々と奏でられる「マイホームタウン」へと、動から静の展開が印象に残る。
思えば、浜田省吾が歌っていたホームタウンって、我々世代が育った高度成長ニッポンの原風景なんだよなあ。そんな場所から紆余曲折を経て今日に至った後、いったいどんな未来が紡ぎ出されていくのか?そんな未来に対し、ただ傍観しているのではなく、意志を持って対峙していこうじゃないか!というのが、このアルバムの初めから終わりまでを貫くメッセージだと思う。けして悲壮な覚悟というわけではなく、出逢いや希望、歓喜といった明るい言葉をモチーフに選曲された演奏を通じ、それが表現されているのがよい。演奏の水準は、文句なくハイレベル。全曲スタジオ録音とは思えぬ、緊張感あふれる力演が続く。

それから、このアルバムにはライナーノートに記載された11曲に加え、最後にもう1曲シークレットトラックなるものが収録されている。どうやら2通りの曲目があり、そのどちらが当たるかは購入してからのお楽しみという趣向らしいのだが、自分が購入した盤には、吉田拓郎の「イメージの詩」のカバー(スタジオライブ?)が入っていた。
これが何と演奏時間8分を超える大作・・・・!
古い船を今動かせるのは、古い水夫じゃないだろう」もう30年以上も前の、フォーク歌手が歌っていたメッセージソングだ。これが新しい演奏に乗って、生々しく心に響いてくるから不思議。聴いているうちに、何だかやる気がわいてきた。力のある音楽とは、人を動かすものなのだ
(ちなみに、シークレットトラックのもう1つの曲目は、浜田省吾の「僕と彼女と週末に」らしい)

11月 23, 2004 日記・コラム・つぶやき, 音楽 |

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櫻井和寿、小林武史を中心としたBankBandのLIVE DVDが出る。 続きを読む

受信: 2005/03/04 1:55:55

コメント

山城守さん、こんばんは。
なる程、「限りない欲望」から「マイホームタウン」への流れは、こういう風に言葉にすれば良かったのですね。私は、ただ、漠然と良いなぁと思っていましたが、なんだか、改めて、納得したような気がします。
ちなみに私のもってる奴のシークレットトラックは、「僕と彼女と週末に」でした。しみじみと、綺麗に歌い上げていました。

投稿: chic | 2004/11/27 0:26:36

TB有難うございます。ポイントを押さえた文章に感服しました。陽水フリークはどうしても陽水関連の曲だけをピックアップして聴くもので・・・。

投稿: HIRO@YOKOHAMA | 2004/11/27 23:07:26

chicさん、HIRO@YOKOHAMAさん、こんにちは。
まとめレスにて失礼します。
BankBand、今の時代にはいささか重たい感じのするアルバムですが、1曲1曲のクオリティが高く、ドライブのBGMに使っても違和感を感じさせないあたりがよいと思います。正直、中島みゆきのウェットな世界は苦手でしたが、うまく料理してもらったので、抵抗なく味わうことができました。ではでは。

投稿: 山城守 | 2004/11/28 21:31:18

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